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コラム: 規制緩和と参入機会 [コラム]

先日のアイピーモバイルに関するエントリーには多くの反響を頂きありがたく思っています。かつて業界の内部にいらした方の下記のコメントは大変重みがあります。海部さん、大変勉強させていただきました、ありがとうございました。

「アイピーモバイル」、「パイレーツ・オブ・カリビアン」と「テレコム大航海時代」



さて、MVNOの苦境を尻目に、日本でのモバイルWiMAXは盛り上がっているよう。イーアクセスとソフトバンクらが中心となったOpenWin(関連記事)、KDDIを中心とするグループ(関連記事)、アッカとドコモが中心のグループ(関連記事)と大手どころが出揃った。



どうやら総務省は新規参入を促進する考えでいるようで、既存の携帯電話事業者の出資比率を1/3以下にする方針でいるらしい(関連記事)。ちなみに、出資比率を考えるとき1/3というのは大事な数字で、これ以上の議決権を持つと、取締役選任や会社の事業展開について拒否権を有することになるため、経営に影響を及ぼすことが出来る。総務省はあくまで既存の大手携帯電話事業者3社の影響力を下げたいようだ。



モバイルWiMAXはまだ始まったばかりなので先行きは読めないが、総務省が規制緩和を促進しようとしている姿は興味深い。



今日は、そんな規制緩和は是か非か、考えてみたい。焦点を絞るために下記のような観点で見てみよう。



  1. 規制緩和は誰かの利益になるか
  2. 規制緩和は新規参入を促進するか
  3. 規制緩和はベンチャー企業にとってチャンスか


1については「規制緩和の促進」→「新規参入&競争激化」→「商品・サービスの向上、価格の低下」→「利用者の利益」というような展開をたどることで、最終的に利用者が利益を得るはずだ、という考えをよく耳にする。一般的にはこのような傾向が現れるものではないか。たとえば大規模小売店舗(例えばスーパー)の出店規制においては、規制を緩めることで大規模スーパーの出店が相次ぎ、競争が促進されて利用者が利益を受ける、というようなことが想定される。規制とは直接関係無いかもしれないがソフトバンクが新規参入して価格破壊を引き起こしたYahooBBやホワイトプランも参考になろう。



ただ、規制を緩めるにしても、その程度が問題だ。行過ぎた規制緩和は過剰な競争を生み、その結果淘汰が起こり、最終的に生き残るのは一部の大規模業者だけ、ということになりかねない。アメリカの通信業界ではかつて強大な権力を持ったAT&Tを解体して地域ごとの電話事業者に分断したが、結局のところ合従連衡が進んで今は大手数社による寡占状態に戻ってきたという。



また日本の携帯電話業界が世界的に見て高度に発展してきた背景には、NTTドコモを頂点とする携帯電話事業者が財務的に余裕があり、長期的な視点で研究開発を行ったり、ベンチャー企業を支援して一種のコミュニティを作ったり(ドコモの公式サイトやそこにおける決済代行サービス等)出来たことが要因だったのではないか。事業者にもある程度の利益(適正利益)は必要だと考えられ、これを過度な競争は業者を疲弊させる。その結果新たなサービスが提供されなくなって、長期的には利用者の不利益となる、という説もありえる。



つまり、規制緩和=利用者のメリット、とは必ずしも言えない。だから規制緩和には常にその「さじ加減」が問われるわけだ。そんな意味で、モバイルWiMAXの規制緩和は現実的な線ではないかと考えている。



次に、2の規制緩和と新規参入の余地の関係についてだが、これには市場の成熟度が影響してくるように感じている。



成長市場にあっては比較的新規参入は容易ではないか。市場がどんどん伸びている、つまり昨日まで顧客で無かった人が今日から新たに顧客になるというような市場では、大手業者だけでなく、中小の業者でもやり方しだいでは一定のシェアを確保できそうだ。



しかし成熟市場になると難しい。一般に成熟市場においては大手企業同士が限られたパイをめぐってシェア争いを繰り広げる。その過程でしばしば価格競争が起こり、潰しあいを始める。体力勝負になるわけだ。こんな市場にはたとえ規制が緩和されても容易には新規参入できない。



私の想像だが、日本の携帯電話市場は成熟市場なのではないか。そんな業界で規制緩和をしたところで新規参入業者が利益を上げるのは難しい。日本のMVNOは上記のような理由で大変困難が予想される市場だと考えている。一方、モバイルWiMAXについては、何か新しい使い方を提案できれば新市場を切り開く可能性があり、どんな新市場を提案できるかにかかっていると考えている。



最後に3の規制緩和とベンチャー企業の関係だが、これはここまで書いたことで自明になってしまったが、規制緩和がなされる市場が「成長市場」であれば、ベンチャー企業にも十分参入余地があるのではないか。また「成熟市場」への参入は少々考え物で、その場合には新たに市場を作るなり切り出すなりの工夫が必要、というのが私の持論だ。


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