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BEA買収に見るOracleの交渉術 [IPO/M&A/資金調達]

OracleはまだBEA Systemsの買収を諦めていないようだ。



BEAとえばアプリケーション・サーバーのWebLogicで有名な企業。EC等のWebサイトの裏側では様々なアプリケーションが動いているものだが、そのシステムの中核ソフトウェアとして使われてきた。そんなBEAが先頃、大株主やアクティビストから身売りを迫られ、Oracleへの身売りを交渉。Oracleから株価$17での買収提案を受けたものの、BEA経営陣は株価$21を要求したまま交渉期限の今年10月末になっても話はまとまらず、交渉が流れた経緯がある。(出典

BEA has been pushed to sell itself by major shareholder and activist investor Carl Icahn. It rejected an offer of $17 a share from Oracle, countering with an offer to sell for $21 a share. Oracle withdrew its bid.

10月の交渉時はBEA経営陣が強気だったためにM&Aがまとまらなかったわけだが、その強気の理由は下記に記すように業績が好調だったことにあるのかも知れない。(出典は上記と同じ記事)

BEA's surprise: Profit soars 59% (2007/11/16記事)

BEA Systems released its first audited quarterly statements in more than a year Thursday, and they show the company doing better than Wall Street expected, with a 59 percent jump in earnings.

.... The San Jose business-software company reported third-quarter total revenue of $384.4 million, an increase of 11 percent from last year's third quarter. License fees of $134.8 million were down 1 percent from last year while services revenue of $249.6 million was up 18 percent.

.... Third-quarter net income was $56 million, up 59 percent from $35.1 million a year ago.

つまり、第3四半期の業績は、売上も前年同期比11%増、利益も同59%増、とすこぶる好調なわけだ。あまり好調なので記事のタイトルが"surprise"となったのだろう。



ただ、売上の内訳を見ると状況は楽観視できるものではなさそうだ。ライセンス収入が前年同期比1%下落の$134.8m、代わりにサービス収入が同28%プラスの$249.6mとなっている。つまり、ソフトウェア企業の事業の根幹であるライセンスが伸び悩んでおり、しかも全体の3割ぐらいしか占めることが出来ず、残りを関連サービスで埋めている、という構図が見えてくる。この構図は、ソフトウェア企業としては微妙だ。サービス業に近づいてきていると言える。WebLogicというCash Cowがあるものの、将来の糧となるべき新たな商品を出せていないということではないか。



ソフトウェア製品はコピーすれば売れる。ソフトウェアを開発するのに多大なコストを要するが、完成してしまえば後はメディアにコピーして箱詰めして売ればいい(ダウンロード版なら箱詰めすらいらない)。一度ヒット作を作れば、後はどんどんコピーして売ることで業績も急拡大、事業としての高いスケーラビリティを持つわけだ。これがソフトウェア事業の醍醐味なのだろう。一方、サービス業の場合、事業の規模は製品の良し悪しよりもサービスに従事するエンジニアの数と働き具合に依存してしまいがちだ。その意味で、ライセンス収入が少なくサービス収入が多いというBEAの構図は、今後の急激な成長は期待し難い、と連想させてしまう。



11月16日のBEAの決算発表より少し前の11月14日、OracleのLarry Ellisonはコメントを発表したようだ。(以下、CNET Japan 2007/11/16記事引用)

オラクルのエリソンCEO:「BEAの買収額は67億ドルでも高すぎる」

 Oracleは米国時間11月14日、仮に同社のライバルであるBEA Systemsの買収価格を再提示するとすれば、当初の提示額である1株あたり17ドルを下回るだろう、とアナリストらに語った。
 Oracleの最高経営責任者(CEO)であるLarry Ellison氏は、同社が当初BEAに提示した67億ドル(1株あたり17ドル)という買収価格は現在では高すぎると語った。

Oracleは10月の提示額をさらに引き下げる意向を示したわけだ。同記事を見ると、その事情はBEA従業員が将来退職する際のコストが高くなったためのように感じる。



発表のタイミングがまた絶妙だ。BEAの決算内容をOracleが事前に察知していたかどうかわからないが、BEAの決算発表よりも前にOracleがコメントを発表することで、BEAの気勢を制する効果を持ちえる。



Oracleがこうした強気のコメントを発表した裏には、上記のようなBEA買収のコスト増の要因に加え、個人的にはOracleの「交渉力の強さ」も影響しているのではないかと考える。10月の買収交渉の時、Oracle以上の買値を示す企業が現れなかったため、今後もOracle以外の買い手が現れる可能性は低い。であれば、OracleはBEAをもっと低い価格でも買えるじゃないかと。実際、BEAが得意としているアプリケーション・サーバーの分野で著名な企業と言えば、BEAの他にはIBMぐらいしか思い浮かばないが、IBMはBEAの対抗製品を持っているので直接BEAを買いに来る可能性は低い。であればOracleは買い急ぐ必要はない。一方のBEA側だが、BEAの株主自身が自社を売却するよう経営陣に要求しており、BEA経営陣は時間がないと推察する。時間に余裕がある方と余裕がない方、どちらが強い交渉力を持つかは明らかだろう。

 Ellison氏は、「われわれのミドルウェア事業は現在急成長を遂げており、もはやBEAなど必要ない(中略)われわれは急速にIBMに追い付きつつある」と述べる。
 Oracleにとっては、BEAの顧客にOracleのミドルウェアを購入するよう懇願するという時間のかかる方法を取るよりも、BEAを買収する方がより早く事業規模を拡大できるだろう。
 「われわれがBEAの買収を希望した理由は、同社の技術とは無関係だ。すべては事業規模の拡大が目的だ」(Ellison氏)
 また同氏は、規模の経済を手に入れることにより「莫大な利益の獲得」が可能になり、さらに1株あたり17ドルでBEAを買収することにより、その利益は大幅に増加する、と付け加えた。

いつものことだが、Larry Ellisonはとても強気だ。アメリカ的な資本主義、強気の資本主義を見る思いだが、交渉方法がとてもしたたかで巧みだ。交渉術というのはあまり気持ちいいものではなく、心情的には納得しがたいものもあるが、世紀のM&Aの事例として勉強にはなる。



ちなみに、BEAの時価総額は64億ドル(2007/11/16終値、約7千億円)。買収が成立したら今年の大型買収ランキングに登場しそうな規模だ。


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