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シリコンバレーの世代交代 [VC業界動向]

さてさて、すっかりご無沙汰してしまいました。


「もうブログは止めちゃったんですか」的な問い合わせも頂きつつ、ありがたいことだと思いながらも、何となく気乗りしないでおりました。


「シリコンバレーから元気のいい話題をご提供」と思いながら「シリコンバレーの日々」を始めて早いもので7年目、業界の風景もあれこれと変わってしまったものです。投資家という立場から見るその風景は、幾多の流行り廃りがあり、プレーヤーの交代があり、成功した人もそうでない人もいて、何となく「諸行無常だなぁ」ってなことを思ったりしていたわけです。


ことに、個人的に自然エネルギー系に注目していたのですが、自然エネルギーのような大規模な資金調達を要する事業は総じてやや苦戦気味。太陽電池関係などはその筆頭で、この1年で多くのベンチャーが破綻していきました。SolyndraやらUniSolarといった著名どころだけでなく、比較的注目度の高かった下記の2社の破綻も伝わってきました。各社とも巨額の資金を投じてきただけに残念です。


Konarka :  Thin-Film Solar Panel Maker Konarka Files For Bankruptcy

Abound Solar : Solar Firm Seeks Bankruptcy Protection


でも、元気の出る話もあれこれ出てきましたね。


最近の大きな流れと言えば、何といってもAccelaratorの方々の台頭でしょう。多くの著名なプレーヤーが出てきており、日本でも同じような業態が流行ってます。中でもAndreesen Horowitzさんあたりは惚れぼれしますね。理念がすばらしい上、$1.5Bという巨額のファンドまでお持ちです。シードから投資するファンドでこの規模は破格でしょう。これだけ大規模な金額を運用しきれるか? という疑問は残りますが(このあたりの疑問に対する回答はこちら)、信念を貫いて突っ走れるところは何と言っても頼りがいがある。今後、どこまで成長されるか、ますます注目です。


Facebookの上場の余韻がまだ残るシリコンバレー、引き続きソーシャルが重要な分野であることには変わりはないのですが、ソーシャルも、ソーシャル以外も、これからどこに向かっていくか、引き続き追いかけていきたいものです。


また折に触れてアップしていきたいと思います。


悲喜交々の太陽光: 巨額資金を集めたBrightSource、退出するSoliant [VC業界動向]

福島原発の事故以来、世界のクリーンテック業界が騒がしい。今後のエネルギー政策の方向性や次世代の本命技術を巡って百家争鳴状態だ。


原子力を代替する手段として注目を集める太陽光発電だが、その中でも事業規模の大きさが特徴の「集光型太陽光発電」における著名企業2社で新たな動きがあった。


BrightSource Energy社が$201Mの資金調達をした。シリーズEラウンドだそうだ。


引用: BrightSource Raises Another $201M for Solar Thermal
Greentech Media, March 31, 2011 

BrightSource Energy of Oakland, Calif. has raised $201 million in a Round E, bringing its total funding to more than $530 million in private equity. That funding is in addition to a federal loan guarantee of $1.3 billion. The investors include Alstom, a French power plant player, as well as the usual suspects -- Vantage Point Venture Partners, Alstom, CalSTRS, DFJ, DBL Investors, Chevron Technology Ventures, and BP Technology Ventures, together with new investors. 


BrightSourceは今回の調達額を含め、累計で$530M以上を集めたようで、更に連邦政府から受けている13億ドルの債務保証を合わせると、総額で18億ドル(約1,500億円)もの資金を集めたことになる。アメリカのベンチャー投資の規模は総じて日本よりも大きいが、ここまでの規模になる例はそれ程多くない。ベンチャー投資というよりは、グロース投資、あるいはインフラ投資というべきだろう。投資家の顔触れはVCではVantagePointやDFJ、金融系ではMorgan Stanley、事業系では石油会社のBPやChevronが入っている。Googleも出資しているようだ。ピカピカの顔触れだ。


これだけの資金を投じたこともあり、やることもデカイ。集光型の太陽光発電(太陽熱発電という方が正しいでしょうね)のプラントを米国のあちこちに持っているようで、1ギガワットを超えるクラスの発電設備に複数関与しているようだ。ちなみに、福島原発の発電機6機を合わせた出力は4.7ギガワットになるらしいが、福島第1原発全体の規模と比べると、1ギガワットという出力の大きさがなんとなくイメージできる。


発電出力は大きいが、それなりの資金をつぎ込んでいる。果たして発電コストがどうなるのか気になるところだが、政府の支援も取り付けて脇目も振らずに突き進むあたり、いかにもアメリカ的だ。この会社がいくらでIPOするか、非常に注目される。


アメリカにはこんなBrightSourceのような注目のベンチャー企業もあるわけだが、その一方で静かに退場していく企業もある。


引用: Emcore Acquiring CPV Firm Soliant for $450K

Greentech Media, March 28, 2011

Emcore (NASDAQ:EMKR) is acquiring Soliant, the rooftop concentrated solar company, according to a reliable source.  We're awaiting a response from the involved parties but have gotten a verification from other sources close to the deal.

And the sale price is, drumroll please, $450,000.

Soliant had raised more than $29 million in venture funding from Rockport Capital, Nth Power, Rincon Venture Partners, Convexa, Trinity Ventures, and GE Energy Financial Services.


Soliantという集光型太陽光発電(こちらは太陽電池タイプ)の会社が45万ドルで売却されたという記事が出された。Soliantは$29Mの資金を集めながら、ほとんど二束三文で売却されてしまったことになる。投資家の顔触れも決して悪くなかったし、有名な企業だったが残念な結果だ。


原発をめるぐ今後の方向性がぐらついている中で、日本でも海外でもクリーンエネルギーに対する期待が高まる方向にあることは間違いなかろうが、一筋縄でいくものでもない。成功するまでのコストは大きく、失敗するリスクも少なくない。肝を据えて取り組む必要がある分野だ。


TwitterにIPOは不要か [VC業界動向]

Twitter 最近、 いつでもIPOできる規模に成長した会社でありながら、なかなかIPOしない会社が目につく気がしている。Facebookしかり、Zingaしかり、、、Groupon、Nanosolar、Silver Spring Networksなどなど、ネット系、グリーン系などで目にするように思っている。いずれも既に十分な事業規模がありながら、なお急成長中の企業達だ。Twitterも注目株でありながら、なかなかIPOしない会社の一つだ。


今週、Twitterの共同創業者Biz Stone氏が語ったところによると、少なくともしばらくはIPOする気はないらしい。


引用: Twitter's Stone: no IPO or funding talks


(Reuters) - Twitter has no plans to go public any time soon and does not need additional funds because it is making money, the co-founder of the popular microblogging site said.


IPOする気はないし、当面は資金調達も不要だという。更にJPMorgan ChaseがTwitterの株式10%を4.5憶ドルで買い取りたいとオファーしているらしい。実際に売買がなされるか不明だが、Twitterの時価総額は45億ドルと評価されたことになる。


Stone also dismissed speculation that JPMorgan Chase & Co was in talks with Twitter to buy a 10 percent stake for $450 million, which would value the company at $4.5 billion.


ちなみに、Twitterは財務内容を公開していないが、eMarketerの調査によると、2010年の売り上げは45百万ドル(ほぼ広告収入か)、2011年は150百万ドルに達するかもしれないという。
PSRでいえば、2010年ベースで100倍!、2011年ベースで30倍だ。


引用: Industry tracker eMarketer said in January that Twitter likely generated an estimated $45 million from advertising in 2010 and could generate about $150 million this year. The startup does not disclose its financial information.


ちなみに、非公式な情報だが、今週、SharesPostから送られてきたNoticeによると、SharesPostの仲介により、TwitterのB優先株35,000株について34.50ドルで売買が成立したという。


SharesPostのデータを元にTwitterの発行済株数を推計すると2010年12月時点で233百万株となるが、34.50ドルの株価がついたということは、時価総額は233百万株×34.50ドル=約80億ドルと、さらに高騰したことにな。妥当な時価総額とは思えないが、それだけ人気を集めていることだろう。


こうした未公開株式の売買事例は、ベンチャー企業への投資ラウンドに多大な影響を与えていくことだろう。未公開の段階で売買できる手段が増えてきたら、株式公開の意義ってなんだっけ? ということになりかねない。情報開示が十分でない中で株を売買するわけだから、それなりにリスクも高いはずだが、急成長していることが明らかな企業の場合には、細かな情報開示がなくとも現実に売買が成立してしまうのが現実だ。


情報開示やら内部統制やら、公開企業に求められる規制は少なくないが、そんな「重たい」規制を後目に、未公開企業の株式があちこちで流通するとなれば、新興市場の位置づけやあり方が問い直されることになりかねない。アメリカにおいてすら、、、、


いわんや、日本においてをや、、、


FacebookやLinkedInに見る最近の米IPO動向 [VC業界動向]

日本の大手SNSといえばMixi、Gree、モバゲーの3社であろうが、最近は日本でもFacebookが急速に広まりつつあるように感じる。個人的にはFacebookにはあまり真面目に取り組んでいなかったが、ひょんなことから登録したFacebookから最近頻繁にメールが送られてくるのだが、そうしたメールを見ていると私の知人の多くが既にユーザになっているようだ。恐るべきは、そうした知人と私とはFacebook上では何らつながりがないにもかかわらず、何らかの情報を元にしてのことだと思うが、Facebookが私に対して「知り合いではありませんか」と問いかけてくることだ。実名公開の威力であろうか。Facebook恐るべし。


Images さて、そんなFacebookは今年1月に15億ドルの資金調達を発表して話題になった。調達額の巨大さでも注目だが、時価総額も既に驚くほど高騰している。未公開株の売買を仲介するSharespostではFacebookの時価総額は1月29日現在828億ドルを記録している。日本円にすれば約8兆円だ。未公開企業のため財務データや発行済株数などに関するデータは見当たらないが、時価総額の点でも間違いなく既に巨大企業になっていると言えるだろう。


FacebookVenture-Backed Index Value


$82.89B  +8.99%  Up_arrow_150

Facebook_chart110124Sharespost_logo_150


Linkedin_logo 一方、同じソーシャル系企業の中からIPOに向けてFilingを完了したのがLinkedInだ。ソーシャルグラフの著名企業で、経歴+人脈を可視化することでその人のバックグランドが一目でわかるようなツールを提供している。転職が盛んな欧米では大人気で、日本人ビジネスマンも多く登録している。IPOにより175百万ドルの資金調達を目指すと報道されている。


引用: FT.com : LinkedIn looks for boost with IPO

LinkedIn, the business-focused social network, has filed registration documents for an initial public offering that could raise $175m, as it seeks to take advantage of investor appetite for internet companies even before it shows sustained profitability.


注目の時価総額だが、まだFinling情報を見てないため詳細はわからないが、先のSharespostでの取引実績ではLinkedInの時価総額は$25億ドルだ(1月29日現在)。


LinkedInVenture-Backed Index Value

$2.51B  +0.00%  Neutral_arrow_150

Linkedin_chart110124Sharespost_logo_150

業績だが、先のFTの報道では2010年の売上は前年比2倍の勢いで、1-9月の9カ月で161百万ドルという。年間売上見込みを250百万ドルと見積もると、時価総額は既にPSR=10倍のレベルに達していることになる。


The LinkedIn prospectus filed on Thursday said the company’s revenue doubled in the first nine months of 2010 from the same period a year earlier, to $161m, though it expects that rate of increase to slow.

一方の利益は9カ月で1.9百万ドル。仮に年間2.5百万ドルとすると、PER=100倍だ。

It reported $1.9m in profit attributable to common shareholders during that period and said it did not expect to be profitable in 2011 on a GAAP basis.

LinkedInの時価総額はFacebookの30分の1以下でしかないが、それでも結構な時価総額だ。FacebookのIPOがどうなるか、しばらくはこうしたソーシャル系企業のIPOが話題を呼びそうだ。

そういえば、映画「ソーシャル・ネットワーク」はゴールデン・グローブ賞で最優秀作品賞をとり、アカデミー賞の有力候補になったとか。2011年はソーシャルの年になりそうだ。

バブルか、リアルか、、、、今年もソーシャルから目が離せない。

電気自動車のTeslaがIPOへ、太陽電池のSolyndraは延期 [VC業界動向]


TeslaRoadster6月28日の週にTeslaがIPOする予定だ。注目ベンチャーだけにどのくらいの価格がつくか楽しみだ。



Tesla Mortorsと言えば数年前から盛り上がってきた電気自動車ブームの中心的存在で、スポーティな電気自動車が有名だ(関連記事)。最近ではトヨタ自動車が出資して話題を呼んだ。



Yahoo Financeによると、売上は111百万ドル、約100億円ちょっとあたりだ。1年間の売上成長率がプラス659%とあるから、7倍以上に膨らんだようだ。(下記参照)



出典: Yahoo Finance



Financial Highlights
Fiscal Year End: December
Revenue (2009): 111.90 M
Revenue Growth (1 yr): 659.30%
Employees (2009): 514




IPOに伴う公募予定価格は14~16ドルだという。米証券取引委員会(SEC)に開示されている資料によれば、発行済株式数は普通株が約60百万株、優先株(AからEまで)が約209百万株の合計269百万株となっており、仮に公募価格を$15とすると、公募価格ベースの時価総額は約40億ドル($15×209百万株、増資前)となる。(訂正:16億ドルとの説が流れている)

売上高1億ドルに対して時価総額40億ドルとは、不景気も吹き飛ぶ高額さで非常に注目される。もちろん、今後注目される高級セダン"Model S"なども含めた業績急拡大を期待した数字であろう。この価格設定には米国内のメディアでも諸説あるところだが、今後の動向に注目したい。

ちなみに、先にリンクしたSECの情報では日本の目論見書よりも細かな情報が開示されているので雰囲気だけでも皆さんに味わって頂きたい。公開企業の情報開示に対する意識の差を感じる。

ところで、Teslaの陰で、IPOを延期した著名企業がある。太陽電池の注目ベンチャーSolyndraだ。

引用: Solyndra nixes its IPO, but brings in $175M to keep the ball rolling
 June 18, 2010 | Camille Ricketts

Solyndra, the maker of cylindrical solar cells that filed to go public late last December, has withdrawn that filing from the SEC, choosing instead to raise $175 million by selling convertible promissory notes to some of its existing investors. The news spells trouble for the rapidly growing company, and its thin-film solar peers.

Solyndraは米国期待の太陽電池モジュールのベンチャーで、円筒形の太陽電池モジュールで高効率な発電を目指している。これまで$950百万ドル(約900億円)の資金を調達し、加えて米国政府(エネルギー省)から$500百万ドル以上の債務保証も受けており、資金調達力は圧巻だ。このベンチャーがIPOを一旦キャンセル(Withdraw)し、一種の転換社債によって$175百万ドルを私募調達するという。

キャンセルの理由は不明だが、先に引用した記事によると、売上が計画($300百万ドル)を大幅に下回っているとか、エネルギー省による債務保証に義務付けられた監査において、監査人が債務について懸念を示したことなどが囁かれている。また、最近IPOしたグリーンテック系企業の株価が低迷していることも延期の理由だったようだ。

...it’s still falling far short of the $300 million it had hoped to get from its public sale.

... Both biofuel maker Codexis and Chinese solar firm Jinko Solar went public in recent months, with shares selling at the low end of their price estimates

注目のグリーンテックベンチャーと言えども、景気後退には勝てない。無理やりIPOするのではなく、機が熟すまで待つというわけだ。アメリカではIPOのキャンセル(Withdraw)は珍しくない。きちんとした数字は見てないが、IPOを申請した会社のうち、何割もの会社がWithdrawしている。柔軟と言えば柔軟だ。市場環境を見ながら、理に適わなかったら潔く撤退することが日常的に行われている。Withdrawもまた健全さの市場システムの証と見てよかろう。

TeslaとSolyndraはベンチャー企業としてはどちらも日本ではありえないぐらい大きい。如何にもアメリカ的なベンチャーのあり方であり、これがそのまま日本に馴染むかどうかはわからないが、参考にすべきところはしたいものだ。


アメリカも日本もゲームばやり: Zyngaが30億ドル [VC業界動向]

020909121934gameBig_farmville Zyngaというソーシャルゲーム企業が有名だ。FarmVilleなど人気のゲームを運営しており、日本のネット業界にも影響を与えている。


Zyngaはまだ未公開企業なので、厳密な意味で株式の市場価格はまだないが、Zyngaの株式は未公開株の取引を仲介するSharesPostにもリストされている。そのSharesPostのレポートによると、Zyngaの時価総額は30億ドルに達するという。3000億円弱の価値だ。VentureBeatのエントリーを引用させてもらおう。


FarmVille, Mafia Wars maker Zynga is worth $3 billion, says trading site SharesPost

... But a study done by research form Next Up for pre-IPO trading service SharesPost says Zynga is worth three billion dollars, putting it in the same league as Facebook’s estimated $5B valuation.


SharesPostはIPOが近い未公開企業の株式の相対取引を仲介している。Facebook、LinkedInなど著名な企業も取引事例があるようだ。そうした取引事例などをもとに時価総額を評価していると思われるが、評価の仕方を詳しく見てみると、


“Steady-state target EV/Revenue multiple, and comparative EV/Revenue multiple based on a peer group. We arrived at a market cap of $2.806 billion to $3.315 billion for Zynga, and an estimated price per share of $14.97 to $17.68.”


つまり、企業価値/売上高の指数を元に他の類似企業と比べて算出したという。Zyngaの売上高は公表されていないので、いったいどの程度の指数が使われているのか知るすべはないが、30億ドルという数字の巨大さを考えれば、Zyngaはそれだけ儲かっているか、あるいはそれなりに高い指数が使われているということになりそうだ。


景気後退による巣篭もり消費拡大やiPhoneなどスマートフォンの大ヒットなどを背景に、ソーシャルゲームの勢いはまだしばらく続きそうだ。


2010年の注目分野 [VC業界動向]

2010年がスタートした。後ろ向きな話が多かった2009年に比べ、先行きに明るさも見えてきたようだ。今年の注目分野は何か。VentureBeatに紹介されたエントリーを引用させてもらおう。

引用: Eight trends to look for in 2010
Dave Kellogg氏 December 29, 2009 

  • 競争優位のためのIT投資が復活
    景気回復に伴い、事業法人がITをコスト削減の手段としてでなく、競争優位性確立の手段として使い始めるという。前向き投資の復活だ。こういう時代に売れるのは、安価で汎用的なパッケージ製品よりも、新しいサービスを迅速に提供するインテグレーションかもしれない。
    日本ではまだまだ二番底を懸念する空気が漂うが、アメリカではこうした前向きな話が出てきていることに注目したい。
  • ソーシャル・ネットワークの細分化とSNS疲れ
    数あるSNSの機能分化が進む。プライベートで使うSNS(Facebookなど)と仕事で使うSNS(LinkedInなど)を使い分ける人が更に増える、というような意味だ。また、(特に若年層よりも上の世代で)SNS疲れともいうべき兆候が増えるだろう。(どちらも日本ではすでに起こっていることかも)
  • クラウド・コンピューティングへの期待と幻想
    2009年に最も盛り上がったIT用語は「クラウド・コンピューティング」かもしれない。そうした状況についてガートナーが"Peak of inflated expectations"と言ったらしいが、期待が大きすぎて2010年は幻滅に変わるかもしれない。何が本物か問われる年になりそうだ。
  • データベース業界包囲網?
    データベース・エンジンといえば、OracleをはじめIBMやMSでほぼ業界構造が安定していると思っていたが、どうやらそうでもないらしい。タグやメタデータが重要視される時代にあっては、あらかじめデータ構造を定義した「定型」タイプのデータベースではなく、データ構造は定義しない「非定型」タイプのデータベースの登場が待たれるのかもしれない。
  • Googleの地位が低下
    MicrosoftのBingや、人力検索のMahaloやAnswervilleといったサービスが市民権を得てきた。Googleの強さは相変わらず圧倒的だが、サーチエンジンの業界構造に動きがありそうだ。
  • XMLが静かに浸透
    ここ数年、XMLが話題に上ることはあまりなかったように思うが、足元では着実に浸透してきているらしい。MicrosoftやAdobeがXMLに対応してきているようだし、XBRLによる財務情報開示、HL7によるヘルスケア情報の開示なども検討されている。XMLを使ったレガシーシステムとネットとの融合が進むという。
  • モバイルが発展
    新型端末、無線通信の高速化、位置情報技術などにより、モバイルアプリケーションが更に盛り上がるだろう。ヘッドアップディスプレイなども注目だ。

日本とは様子が違いそうなところもあるが、日本も含めたIT業界の新たな事業ネタになりそうなものもある。モバイルなどは日本が先行していそうなので、日本発の世界ベンチャーの展開にも期待したいところだ。

本年もよろしくお願いいたします。


米VC業界動向: 本格回復はまだ先か [VC業界動向]

Dow JonesのVenture Sourceから2009年Q3のVC業界統計データが発表された。残念ながらQ3は再び落ち込んだ。

引用: So much for that venture capital recovery
VentureBeat 2009/10/16

... VCs invested $5.1 billion in 616 deals during Q3. That’s down 38 percent from the $8.2 billion invested during the same period last year, a drop you’d expect. But it’s also down 6 percent from Q2, when VCs invested $5.4 billion, so if there’s going to be a recovery, it isn’t here yet.

... Later-stage deals are becoming a larger piece of the pie, representing 40 percent of all deals this year compared to 33 percent last year. Deals are getting smaller, too, with a median deal size of $5 million, compared to $7 million last year.

2009年Q3の米VC投資額は$5.1Bとなり、前年同期比38%のダウン、2009Q2と比べても6%減となった。レーターステージ投資が増え、投資サイズも小型化している。



Venturesourceoverview_3

... information technology (IT) reclaimed the top spot after being overshadowed by health care last year. Within that IT umbrella, it looks like Web 2.0 investments are continuing — in fact, they beat traditional software investments for the first time.

... On the other hand, investment into renewable energy, another industry that’s getting a lot of headlines in the tech world, fell 73 percent to $343 million.

セクターで見てみると、IT分野が相変わらず多いが、ITは2008年と比べても落ち込みが激しく、ようやく下げ止まったという感じだ。ITの中ではWeb系企業が引き続き多く、ソフトウェアよりも大きくなったようだ。クリーンテックは2008年の異常な金額に比べたら控えめだが、これも下げ止まりから徐々に回復しているように見える。



Venturesourceindustries



総じて言えることは米VC業界はまだ調整局面を脱しきれていない。ファンドそれぞれに固有の事情はあろうが、多くのVCに共通した事情として下記のエントリーが参考になる。半年前に書かれたものだが、事態はほとんど変わってないと思われる。

引用: Q1 venture investing numbers not as dire as they look
April 24, 2009,  by Jorgen Lindqvist

  1. Venture capitalists were asked to stop investing.
    Major limited partners (LPs), or investors in funds, asked their private equity (PE) partners to slow down investing and reduce the number of capital calls. Various LPs had engaged in a popular strategy of accumulating debt, and they did not have the cash on hand to honor every investment commitment after both the equity and debt markets collapsed. The number of first time investments fell by 65 percent from Q1 08 to Q1 09 as venture firms stopped making capital calls in order to preserve relationships with the LPs.
  2. New compliance rules tied up venture capitalists.
    In Q1 09, a large number of LPs asked their PE partners to comply with a mark-to-market accounting rule, FAS 157, which is better at valuing mature private companies with public market comparables than six-month-old startups. Venture capitalists were forced to go through both a time-consuming exercise to value their portfolio and a process to figure out the FAS 157 reporting strategy, distracting partners from new investment opportunities.
  3. Cash-strapped portfolio companies needed saving.
    Only the best portfolio companies could raise money from new investors in Q1 2009. This forced venture capitalists to undergo another time-consuming process of evaluating the fund’s portfolio and identifying which companies to support going forward. Some cash strapped portfolio companies needed immediate support, and venture capitalists did a large volume of “inside rounds,” where existing investors set the terms for new rounds into portfolio companies. Without external validation of a company valuation by a new investor, inside rounds require an internal review process that frequently results in dreaded “cram down rounds,” complex penalty terms, lower valuations, and smaller investment amounts. The average deal size shrank by 30 percent from Q1 08 to Q1 09.

まさにこの3点が今の米VC業界の苦境の原因を表していると言えそうだ。



まず、「LPが投資するな」と言っている。これが一番つらい。
VCは機関投資家などから資金を調達してファンドを立ち上げ、このファンドの運用者としての立場で投資活動を行う。自己資金での投資ではなく、人様のお金を運用している、という立場になるわけだ。
一般にファンド運用者をGP(General Partner)、出資者をLP(Limited Partner)と称し、VCがGPに、機関投資家などの出資者がLPになる。運用成績が良好であればLPが強硬な行動に出ることはあまりないが、運用成績が思わしくない昨今の状況ではLPとしても黙って見てられん、ということのようだ。



2つ目が会計基準の強化
日本でも2008年に金融庁がファンドに対して規制をかけたが、米国でも一種の規制強化がなされつつあり、LPがVCに対して投資先企業をFAS 157基準に準じて評価するよう求めているという。FAS 157基準は上場に近い会社を評価する際には妥当だが、創業まもないベンチャー企業まで評価することについてはどうかという懐疑的な声が上がっている。しかし、LPが要求する以上、VCは投資したすべての企業の会計評価をせざるを得ない。評価作業に忙しくて、新しい投資に時間を振り向ける余裕がない、ということらしい。
「コンプライアンス栄えて国滅びる」なんてことにならないといいが。



3つ目が既存投資先企業への追加投資に忙しい
多くの投資先企業の経営が思わしくないため、VCはサポートすべき投資先を選別した上で、残った企業に対して追加投資を行う作業を行うわけだが、苦しい局面での投資ラウンドは、投資条件が複雑になりがちで交渉も長引き、しかも少額の投資しかできないことが多い。とても新しいベンチャー企業への投資を検討している時間なんてない。



さらに、同じエントリーに下記のような気になる記述があるので引用させてもらう。これが本当に米VC業界で起こっているとしたら由々しきことだ。

I believe these are all early indicators that the overall asset class of “venture capital” is being abandoned by limited partners.

LPはVCファンドに出資した資産の多くを減損する兆候がある、というものだ。どの程度減損するかまでは記述がないが、大半を減損した場合、LPはそのファンドへの興味を失うこととなり、信用を失ったGPはますます積極的な手を打ちにくくなる、という悪循環に陥りかねない。



先週、New Yorkのダウ工業株30種平均は一時1万ドルの大台を超えるところまで回復した。そうした市場の回復がVC業界にも追い風となることを期待したい。


Twitterのバリュエーション [VC業界動向]

Logo_2Twitterが今年9月にUS$100Mの資金を調達したようで、発行済株式の時価総額はUS$1B(約900億円)を記録したそうだ。このご時世にあって強気の価格だ。ネット上にTwitterのバリュエーションの推移が紹介されているので参照してみよう。

引用:Private Company Valuations: Twitter, Inc.

... Twitter, Inc., located in San Francisco, is a short messaging service that allows users to post everything from what they are doing to the latest breaking news. (You might even find this PEDC Buzz on Twitter.) As mentioned, the company recently announced a closing of a Series E round of financing at a reported amount of $100 MM. Based on information posted on the company website, the company publicly thanked investors Insight Venture Partners, T. Rowe Price, Institutional Venture Partners, Spark Capital, Benchmark Capital, and Morgan Stanley. The Deal Terms of this Series E round and the previous rounds were:

Filing Date 07/11/2007 07/17/2007 07/10/2008 02/12/2009 09/22/2009
Liquidation Preference for the Current Round Not Applicable Senior Pari Passu Senior Senior
Round of Financing Series A Series B Series C Series D Series E or greater
Round Direction Not Applicable Up Round Up Round Up Round Up Round
Multiple of the Liquidation Preference: 1x; 2x; 3x; > 3x. 0 - 1x 0 - 1x 0 - 1x 0 - 1x 0 - 1x
Type of Preferred Stock Conventional Convertible Conventional Convertible Conventional Convertible Conventional Convertible Conventional Convertible
Anti-Dilution Protection   Weighted Average Weighted Average Weighted Average Weighted Average
Redemption at Investor's Option No No Yes No No
Pay-to-Play Provisions No No Yes No No
Cumulative Dividends No No No No No
Price Per Share* $0.01 $0.67 $2.06 $4.31 $15.98
Total Amount Raised in Current Round $97,500 $5.5 MM $17.37 MM $35.7 MM $100 MM


ここに挙げられた数値は会社側による公式発表ではなく、どうやら推定のようだ。よく調べられており、いろいろと興味深いことがわかる。



  • Twitterは創業期(2007年7月~2008年7月)には約$5.6Mしか資金調達していない。米国ベンチャーにしては比較的少額の資金でスタートしている。やはりネット系ベンチャーは少額資金でスタートするのが常道だということか。
  • Cラウンド以降、わずか1年余りの間に$150Mを越える資金を一気に調達してきた。Bラウンドまでの資金調達スピードと比べると爆発的な伸びだ。如何に事業が急拡大してきたかがわかる。
  • CラウンドのLiquidation Preference(残余財産優先分配権)がPari Passu、つまりC種優先株は発行済みのB種優先株と同順位となっており、しかもPay-to-Playまでついている。増資ラウンドにおいては通常優先順位が高まる(Senior)ことが多いことを考えると、Cラウンドに参加する株主よりも既存株主の交渉力が強かったことを意味する(あるいはBとCの株主が同一で順位を上げる必要がない?)。
  • Aラウンドの株価0.01ドルと比較すると、Eラウンドの株価は1.6万倍となった。TwitterにAラウンドで1万ドル出資した人は、持ち株の価値が既に1.6憶ドル(約140億円)になっているわけだ。


日本もアメリカもまだまだベンチャーの業界は楽ではないが、このTwitterの数字の歴史を振り返ると、引き続き伝統的な急成長ベンチャーが健在であること、それを前提としたVCモデルが有効であることを示していると言えそうだ。



ちなみに、今回のデータを引用させてもらったPEDCだが、会費を払えば米国未公開企業のバリュエーションを閲覧できるようだ。


米未公開株式の流通市場 [VC業界動向]

以前紹介した米未公開株の取引サイトを運営するSharesPostだが、未公開株取引の実績もぼちぼち出てきたようだ。米国の未公開企業で有名なところ、たとえばFacebookとかLinkedInとか、そうしたところの売買の現状を見ることができる。



興味のある人は、SharesPostのサイトで誰でも簡単に登録できるのでやってみよう。ログインすれば実際にどのような会社の株式が、いくらぐらいで売買されているのかわかる。まだ登録されてない人のために画面のイメージをお伝えすると、下記のようなものだ。



Facebook_2



写真をクリックしてみると雰囲気がわかると思う。売り手と買い手それぞれの希望価格がリストになっている。この例では、Facebookの株が14.42ドルで取引さることになりそうだ。発行済株数が425百万株なので、時価総額に換算するとおよそ614億ドル、約6,000憶円となる。ちなみに、2007年10月にMicrosoftがFacebookに出資した時の時価総額は150億ドルだったから、約2年の間にFacebookの価値は4倍になったことになる。



同じように有名企業の取引事例を時価とみなすと、最近の時価総額はこのようになる。



  • LinkedIn: 134億ドル
  • Tesla Motors: 109億ドル
  • Twitter: 買気配 2.8億ドル
  • Linden Lab: 売気配 2.6億ドル
  • SolarCity: 買気配 2.5憶ドル
  • SugarCRM: 売気配 1.8億ドル


どのような会社が人気で、逆にどのような会社が不人気か、今の市場の状況が垣間見れて興味深い。


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