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GoogleがZagatを買収 [IPO/M&A/資金調達]

Zagat 世界的なレストランガイドと言えば、フランスのミシュラン・ガイドが有名だが、アメリカ人にはZagat Surveyが人気だ。レストランの評価は「星」ではなく、「数字」でレーティング。料理、内装、サービスを30点満点で評価したもので、ワインレッドの縦長な装丁が特徴的。アメリカ人に、「サンフランシスコでお勧めの店はどこだ」と聞けば、「Zagatで探せ」と応えが返ってくる、定評のあるガイドブックだ。


そのZagatがGoogleに買収された。今後、GoogleのSearchやMapにZagatのガイド情報が表示されるという。買収額などは公表されていない。


引用: Google acquires Zagat, strikes a major blow against Yelp

September 8, 2011 | Sean Ludwig

Google has bought  Zagat, the popular restaurant reviews service. The search giant announced the news on its company blog today and said users will immediately start seeing Zagat’s content integrated in Google searches and Google Maps.
Terms of the acquisition were not disclosed. 


位置情報がらみのサービスはネット業界でも引き続き注目の成長コンテンツだが、レストランはそうした位置情報の中でも最重要だろう。Zagatのレストラン情報がGoogle Mapに出てくるとなればユーザとしても興味深い。


Zagatは創業以来32年立つそうだ。ミシュランとは違って、Zagatの評価は一般の人へのアンケートの回答により統計処理したものだという。ある意味でUser Generatedなコンテンツなのだが、書く人によってばらつきの出る「コメント」ではなく、評価を数値化していることが特徴だ。食べログも「星」を載せているが、これをもうちょっと高い精度でやっている、ということか。


アメリカでよく似たサービスにYelpがある。レストラン情報サイトとしてはこちらの方が有名で、利用者があれこれ口コミ情報を載せていく方式になっており、日本の食べログと同じだ。GoogleはこのYelpを2009年に$550M(!)で買収しようとしたが成立しなかった。で、Googleは諦めきれずに今回のZagatの買収になった、ということか。Zagatの通知化された評価というのは確かに強力だ。Yelpにとっては脅威になるかも知れない。


ネットの世界で巨大なプラットフォームを構築した企業は、世の中の各種コンテンツを次々に統合していく、、、紙媒体しかなかった創業32年の老舗企業がその対象になり始めたという意味では驚きだ。Google、Facebookなどを中核に、今後もこうした「ネットでない会社のネットへの統合」が普遍的に起こるのだろう。日本のDeNAやGreeがこれにどこまで対抗していくか、動向を注視したい。


ところで、日本人である私としては、Zagatもいいのだが、Surveyに写真が一つも出てこないのはいつも取っつきにくいなぁと感じている。お願いだからレストランのメニューやサイトにもっと料理の写真を掲載してくれ、と言いたいのだが、これは文化の問題か。。。


誰か、アメリカのレストランのメニューに写真を載せるサービス、始めてみませんか? ウケると思うんだけどなぁ。。。 もっとも、アメリカのレストランでは、ステーキといえばステーキであって、誤解のしようもない。写真を見ても見なくてもあまり変わらないか。。。


BrightSourceがIPO Filingへ [IPO/M&A/資金調達]

太陽熱発電プラントを展開しているBrightSource Energy社が2回目のIPO Filingをする見込みとなった。


引用: BrightSource re-files for IPO
13 June 2011

Solar thermal project developer BrightSource’s initial public offering (IPO) on Nasdaq looks set to go ahead imminently, after the company filed an amended registration statement to the Securities Exchange Commission on Thursday


BrightSource Energyは、巨大な敷地に何百枚(?)もの大型の鏡を敷き詰めて太陽熱を集め、その熱でタービンを回して発電する発電事業を展開している。業績は赤字ながら、米国政府から$1.6B(約1,300億円)もの債務保証を受けており、資金力は絶大だ。ベンチャー企業と呼べるかどうか微妙だが、IPOが実現すれば、グリーンテック系ベンチャーのIPOとしては今年最大級になるのではないか。その動向に大いに注目したい。


参考: 関連エントリー


GrouponのIPOはバブル再来のきざし? [IPO/M&A/資金調達]

いよいよGrouponがIPOするようだ。いったいどのくらいの時価総額がつくか、あちこちで議論が賑やかだ。NY Timesあたりでは、US$30B(300億ドル、約2.5兆円!)の時価総額がつくかも、なんていう記事が書かれている。


引用: Groupon Plans I.P.O. With $30 Billion Valuation
June 2, 2011

As Groupon would say, the deal is on.
The social buying site on Thursday filed to go public, a hotly anticipated debut that could raise $3 billion, according to two people close to the company who were not authorized to speak publicly. At that level, the company would be worth roughly $30 billion, surpassing the value of Google at its initial public offering.


2004年にGoogleが公開した時の時価総額は$27Bだったが、Grouponに$30Bの価格がつくとしたらGoogleをも凌駕する驚くべき数字だ。ちなみにGoogleのIPOも当時は随分と話題になったもので、Googleの社員からミリオネアが続出し、皆さんシリコンバレーで新たに住宅を買いあさったものだから、シリコンバレーの不動産価格が一気に高騰したなんて噂も流れたものだ。Grouponの社員は8,000人いるというが、さぞかし世界各地の不動産市況に影響を与えることだろう。


 しかしながら、果たして$30Bのバリュエーションは妥当だろうか?


TechCrunchに分析が載っているので引用させていただくと、


引用:Groupon、IPO申請書に基づく年間収益予測は驚異の$2.6B

ついにGrouponが今日IPOを申請し、同社の財務状況があらわになった(リンク先に財務情報全文がある)。Grouponは驚異的ペースで成長を続けている。昨年同社の収益は2万2000%増の$713M(7億1300万ドル)だった。そして、2011年第1四半期だけで、昨年1年間の収益にほぼ匹適する$644M(6億4400万ドル)を上げている。これは前年同期比1万3575%増である。


創業2年目の2010年は売上$713M(約60億円弱)という驚異的な数字を記録し、2011年第1四半期だけで$644Mというから2010年1年分に匹敵する売り上げを記録している。成長スピードは驚異的だ。


しかし、大赤字でもある。2010年は$456Mの損失、2011年第1四半期も$147Mの損失と、大赤字の連続だ。


  2008 2009 2010 2011Q1
売上高 94 30,471 713,365 644,728
売上総利益 5 10,929 279,954 270,000
純利益(損失) -1,542 -1,341 -413,386 -113,891

(単位:千ドル)


2010年はざっくり言って$700M弱の販管費を使っているようで、同年の売上高に匹敵するレベルだ。2010年の平均従業員数が何人であるか不明だが、仮に7,000人とすれば、単純計算で従業員一人当たり100k(約8百万円)を売り上げ、同じく100k(約8百万円)の販管費を使ったことになる。


これって、果たして儲かるビジネスなのだろうか?


急成長によって市場を一気に制覇し、その後で高収益体質に移行する等の手はあると思うが、その段階に移行するまで順調に資金調達出来るかどうか、更に急成長に伴う数々の課題(「スカスカおせち」は記憶に新しい)を如何にこなしていくか、マネジメントの巧拙が問われるところだ。


いろいろと課題はあるものの、話題性たっぷりだ。今後の動向に注目したい。 


IntelがOS企業を買収 [IPO/M&A/資金調達]

Intelが組込Linux大手のWind River Systems社を買収するらしい。買収額はUS$884M(約880億円)、今年夏に完了させると報じられた。



Wind River Systems社は組込OSの世界では老舗中の老舗で、主力製品であるVxWorksは業界内でも信頼性の高いOSとして名前が知られている。



IntelがWind River Systemsを買収する意味は下記の点にありそうだ。



  • デジタル機器市場、携帯電話市場への進出
  • 半導体(ハードウェア)とOS(ソフトウェア)の統合もしくは最適化


ネットブックのような低価格PCに搭載されて大ヒット中の"Atom"チップに見られるように、Intelは軽量・低価格品の市場を狙っているように見えるが、今回の買収はこうした路線をさらに押し進め、スマートフォンのような携帯型デバイスに進出しようとしているものだと思われる。これらはWind River社のコメント(下記に引用)からも伺える。

Wind River Systemsによれば、今回の買収は、「プロセッサおよびソフトウェア分野において、従来のPCおよびサーバ市場セグメントの枠組みを越えて、組み込みシステムやモバイルハンドヘルドデバイスへと進出することを狙う、Intelの戦略」に適合するものとなっているという。

携帯電話のような組込みの世界では、汎用プロセッサが使われることはあまりなかった。組込み機器、特に携帯型のデジタル機器では電池容量が限られているため、ギリギリまで機能を絞り込んで少しでもバッテリーが長持ちするように設計する。そのため、汎用的な半導体ではなく、携帯のモデル毎に最適な半導体をオーダーメードで設計・製造するのが一般的だった。こうした半導体を一般に「カスタム」とか「カスタムチップ」とか呼ぶが、この市場ではオーダーメードでの設計に適した部品(IP)、ツール(EDA)、人材(半導体企業)、ノウハウといった分野で多くの企業が事業を展開してきた。



Intelが得意とする汎用プロセッサは、こうしたカスタムとは対極のものだ。各モデル毎に機能を最適化するといったようなことはせず、汎用的な機能を高速・安価で供給しようと考える。限られたバッテリー容量しかないデジタル機器に使えるかどうか微妙だが、Atomの実績を見れば、PCよりも小型の機器に最適化されたチップというのもありえない話ではないのかも知れない。



こうした組込み向けの汎用チップが安価に供給されるとしたら、組込み分野の業界構造を大きく変えそうだ。組込み分野のCPUコアを供給してきたARM、DSP最大手のTI、さらにカスタムチップを開発して収益を上げてきた数々の半導体企業(特に日本勢)にとっては大きな脅威になるかもしれない。



ところで、今回の買収の価格はUS$884Mとのことだが、PERが86倍、PSRが2.5倍と決して安くはない。昨今の市場環境を考えれば、かなりの高額だと言える。M&A市場に与えるインパクトという意味でもこのDealは注目だ。


Facebookが従業員の持株売出のために資金調達 [IPO/M&A/資金調達]

FacebookがUS$150mを資金調達し、従業員の株式を買い取るという。従業員のインセンティブのためのようだが、こういう手法は初めて聞いた。VentureBeat誌に掲載されたエントリーを見てみよう。

引用: Facebook raises $150 million more to cash out employees
VentureBeat, May 16th, 2009

Facebook has almost finished raising $150 million in capital, in an extraordinary move by the company to buy out shares of hundreds of regular employees.

... Now, by selling to those shares investors for a private market value of $10 each, employees can enjoy a nice windfall. According to our sources, the transaction will include the buying out of roughly 15 million common shares — thus equaling around $150 million total value.

今回の資金調達はまだ完了してないようで、会社側も正式なコメントは拒否しているようだが、これが実現するとしたら驚きだ。



成長企業においては、従業員のインセンティブを高めるためストックオプションを発行して株式公開なりM&Aすることで従業員に金銭的な見返りの提供を目指す、といったことがしばしば行なわれるわけだが、現在のように株式市況が低迷している中では株式公開もままならず、従業員のインセンティブにならない、というのは各社に共通した悩みだろう。そうした状況下において、外部投資家の資金を使って従業員の持ち株を買い取るというのは、注目すべき動きといえるだろう。



Facebookは過去数年間の間に急速に成長し、先行するMySpaceをも上回りそうな勢いを見せてきた。ファイナンス面でも強気の姿勢を崩さず、2007年にMicrosoftから資金調達を検討していた際には時価総額US$150億ドル(約1.5兆円)が取りざたされたこともあった(参考記事)。



今回の従業員持ち株買取のための資金調達なんていう荒業は、そうした注目度の高いFacebookだからこそ出来る話なのかも知れない。



ちなみに、今回の資金の出しては既に出資しているVCのようだ。$150mというのは決して小さくない金額だと思うが、米国のVCはお金の持って行き場がないということか。。。

... Because of the size of the round, Facebook’s existing investors — Accel, Greylock, Founders Fund and several others — found it a stretch to supply the full amount of capital. We’re hearing the final part of the deal is being sold to new Asian investors.

ちなみに、今回のファイナンスにはアジアの投資家も参加するらしい。


現実に近づく仮想世界: 3次元グラフィックス技術の向上 [IPO/M&A/資金調達]

画像処理チップメーカー大手のNvidiaが、3次元グラフィックスのベンチャー企業Rayscale社を買収した。買収額は不詳。この買収はグラフィックス関連技術の動向をあらわすものとして興味深い。

引用記事: Nvidia buys ray-tracing tech company RayScale  CNET 2008/5/23

Nvidia confirmed Friday that it has acquired RayScale, a small company that develops ray-tracing technology. Financial terms of the deal have not been disclosed.

Teas_edited1_4 Rayscale社はRay Tracing(レイ・トレーシング)というグラフィック技法を使ったソフトウェアを提供している。レイ・トレーシングは、物体の表面に光が当たったときの反射率、透過率、屈折率等を計算してレンダリング(描画)する技法で、現実世界と見まがうようなグラフィックスが出来上がる。



たとえば右のグラフィックスを見て見よう。これはIntelのBlogに掲載された写真だが、上が従来からよく使われたRasterisedという技法、下がレイ・トレーシング技法だ。全体の影、質感、ポットに写った人影など、リアルさが大幅に向上しているのがわかる。



Rayscale社のホームページ上にあるサンプルも見て見よう。透明感のある床、ガラス球やガラステーブルのリアルさは目を見張るものがある。



レイ・トレーシングの技法自体は以前から存在しているようだ(起源は存じませんが)。しかし膨大な計算を要するためか、かつては高価なワークステーション上で動かすものと相場が決まっていて、プロ用向けにしか使われていないものという印象だった。しかし、PlayStation 3に搭載されたCELLのように計算能力に長けた半導体が登場したことで、精度の高いグラフィックスがぐっと身近になった。PlayStation3上で動くソフトがレイ・トレーシングを使っているかどうか私は知らないが、実物と見分けがつかないほど精緻な自動車のグラフィックスを見ると、少なくともPS3が膨大な処理を行えるようになったことがわかる。PS3がコンシューマーのグラフィックスのレベルをかさ上げしたことで、パソコン側もこれについていかなければならない。今回のNvidiaによるRayscale買収はそんな背景があったのではないか。

Ray tracing has been mentioned frequently by Intel over the last six months. An Intel blog titled "Real Time Ray-Tracing: The End of Rasterization?" and later comments by Intel executives that the company is looking at doing ray tracing on its processors set the stage for debate on the viability of ray tracing in mainstream gaming

Intelもリアルタイム・レイトレーシングに興味を持っていたようだ。今回NvidiaがRayscaleの買収に動いたことでIntelも対抗上自社で技術開発するか、買収によって技術を調達する可能性が高い。



今後、半導体の処理能力アップによって、パソコンが作り出す仮想世界はどんどん現実世界に近づくはずだ。5年もしたらどんな仮想世界が広がっているのか楽しみだ。


MicrosoftはYahooよりもSAPを買収すべきかも [IPO/M&A/資金調達]

MicrosoftによるYahoo買収については今のところMicrosoftの提案をYahooが拒絶する形で膠着しており、双方の陣営で各種の働きかけが行われているようだが、そんな中、New York Timesの記者が面白いアイデアを表明した。MicrosoftはYahooよりもSAPを買収すべきだというものだ。

Maybe Microsoft Should Stalk Different Prey

Published: February 24, 2008

... If Microsoft thinks this is the right time to try a major acquisition on a scale it has never tried before, it should not pursue Yahoo. Rather, it should acquire another major player in business software, merging Microsoft’s strength with that of another. This is more likely to produce a happier outcome than yoking two ailing businesses, Yahoo’s and its own online offerings, and hoping for a miracle.

...Microsoft does business software well. Approximately half its revenue comes from business customers for its e-mail infrastructure, database systems, developer tools, Office productivity applications and other mainstays.

... Professor Cusumano has a suggestion: Rather than acquire Yahoo, Microsoft should pursue SAP.

要約すると、MicrosoftはYahooを買収することでGoogleに対抗しようとしているが、Microsoftの売上の半分はエンタープライズ市場からきているのだから、本業を強めると言う意味ではネット事業の強化よりもエンタープライズ事業を強化する方が利にかなっている。そう考えると、Microsoftが買収すべきはSAPだ、というわけだ。



Microsoftは事業が大きくなりすぎ、焦点がぼやけて来ているかも知れない。元々は基本ソフトのライセンス販売からスタートし、オフィス・スウィート製品で地位を不動のものとし、さらにエンタープライズ市場(サーバー向け製品類)、ホーム市場、ネット市場へと次々と事業を拡大することで強大なパワーを手に入れた。しかし、



  • Oracle, IBM, SAP, et al in enterprise software.
  • Sony, Apple, Nintendo, Research in Motion, et al, in consumer gadgets.
  • Google, Yahoo, Facebook, Time Warner, et al, in consumer media

(引用: Microsoft Should Buy SAP Instead of Yahoo

と書き出してみると、Microsoftと競合する多くの有力企業は得意分野がはっきりしていることがわかる。現在のMirosoftは上記のすべての分野に関わっており、そうした「業界横断的にかかわっていること」がMicrosoftの強みなのかもしれないが、各分野の強力プレやー達が台頭してくると、経営資源を分散しているMicrosoftには不利になりかねない。Googleとの対抗は会社の命運をかけた戦いとなるだろうが、Googleの勢いは強く、Microsoftと言えども勝てるとは限らない。



そうしたリスクを冒すよりも、そもそもの強みであるエンタープライズ市場を強化したらどうですか、というのがNYTのStross氏の主張だ。







Microsoftが既にYahooに対して買収提案をしている現状では、今更方針を転換してYahoo買収をやめてSAPを買収しますとは行かないだろう。しかし、歴史をIFで考えることが出来るなら、経営戦略とM&Aの関係を考える上で大変興味深いケースだと思う。



事態の推移を見守りたい。


ストレージ企業のM&Aが盛ん [IPO/M&A/資金調達]

2000年のITバブル崩壊以後、「IT業界の成長力が弱まった」と思わせる報道をしばしば目にするが、案外底堅いと思わせる例が2つ続いた。

IBM、イスラエルのストレージ会社「XIV」を$350Mで買収

IBMがイスラエルのデータストレージ技術の会社「XIV」を推定$350M(3億5000万ドル)で買収した。
XIVの主力製品「Nextra」は標準ハードウェアコンポーネント複数のグリッドをベースとするストレージシステム。XIVは今後、IBMシステムズ&テクノロジー・グループのシステムストレージ事業部に入る。

... 創業当時の元手は$3M(300万ドル)だから、まるで化け物のような大型エグジットとなる。

2002年に$3mで創業し、5年後に100倍以上で売却という大成功を収めた。1月2日の報道だ。



同じくストレージ分野で1月3日に再びM&Aがあった。

NetApp、ボストン/イスラエル拠点のOnaroを$120Mで買収

Network ApplianceがOnaroを$120M(1.2億ドル)で買収した」とイスラエルの金融関連メディアが伝えている(もっとも、正式にはOnaroの拠点はボストンにある)

こちらも2002年創業のようで、投下された資金は$10m。5年間で12倍だ。開発拠点はこれまたイスラエルのようだ。



なんとも景気のいい話だ。動画配信の増加に伴い、ストレージ技術の刷新が求められているということなのだろう。ストレージに限らず、通信回線、ネットワーク管理といった分野でもさらなる技術革新が求められそうだ。



日本でもこうした新技術を使った新たなサービスが出てきても良さそうな気がする。


BEA買収に見るOracleの交渉術 [IPO/M&A/資金調達]

OracleはまだBEA Systemsの買収を諦めていないようだ。



BEAとえばアプリケーション・サーバーのWebLogicで有名な企業。EC等のWebサイトの裏側では様々なアプリケーションが動いているものだが、そのシステムの中核ソフトウェアとして使われてきた。そんなBEAが先頃、大株主やアクティビストから身売りを迫られ、Oracleへの身売りを交渉。Oracleから株価$17での買収提案を受けたものの、BEA経営陣は株価$21を要求したまま交渉期限の今年10月末になっても話はまとまらず、交渉が流れた経緯がある。(出典

BEA has been pushed to sell itself by major shareholder and activist investor Carl Icahn. It rejected an offer of $17 a share from Oracle, countering with an offer to sell for $21 a share. Oracle withdrew its bid.

10月の交渉時はBEA経営陣が強気だったためにM&Aがまとまらなかったわけだが、その強気の理由は下記に記すように業績が好調だったことにあるのかも知れない。(出典は上記と同じ記事)

BEA's surprise: Profit soars 59% (2007/11/16記事)

BEA Systems released its first audited quarterly statements in more than a year Thursday, and they show the company doing better than Wall Street expected, with a 59 percent jump in earnings.

.... The San Jose business-software company reported third-quarter total revenue of $384.4 million, an increase of 11 percent from last year's third quarter. License fees of $134.8 million were down 1 percent from last year while services revenue of $249.6 million was up 18 percent.

.... Third-quarter net income was $56 million, up 59 percent from $35.1 million a year ago.

つまり、第3四半期の業績は、売上も前年同期比11%増、利益も同59%増、とすこぶる好調なわけだ。あまり好調なので記事のタイトルが"surprise"となったのだろう。



ただ、売上の内訳を見ると状況は楽観視できるものではなさそうだ。ライセンス収入が前年同期比1%下落の$134.8m、代わりにサービス収入が同28%プラスの$249.6mとなっている。つまり、ソフトウェア企業の事業の根幹であるライセンスが伸び悩んでおり、しかも全体の3割ぐらいしか占めることが出来ず、残りを関連サービスで埋めている、という構図が見えてくる。この構図は、ソフトウェア企業としては微妙だ。サービス業に近づいてきていると言える。WebLogicというCash Cowがあるものの、将来の糧となるべき新たな商品を出せていないということではないか。



ソフトウェア製品はコピーすれば売れる。ソフトウェアを開発するのに多大なコストを要するが、完成してしまえば後はメディアにコピーして箱詰めして売ればいい(ダウンロード版なら箱詰めすらいらない)。一度ヒット作を作れば、後はどんどんコピーして売ることで業績も急拡大、事業としての高いスケーラビリティを持つわけだ。これがソフトウェア事業の醍醐味なのだろう。一方、サービス業の場合、事業の規模は製品の良し悪しよりもサービスに従事するエンジニアの数と働き具合に依存してしまいがちだ。その意味で、ライセンス収入が少なくサービス収入が多いというBEAの構図は、今後の急激な成長は期待し難い、と連想させてしまう。



11月16日のBEAの決算発表より少し前の11月14日、OracleのLarry Ellisonはコメントを発表したようだ。(以下、CNET Japan 2007/11/16記事引用)

オラクルのエリソンCEO:「BEAの買収額は67億ドルでも高すぎる」

 Oracleは米国時間11月14日、仮に同社のライバルであるBEA Systemsの買収価格を再提示するとすれば、当初の提示額である1株あたり17ドルを下回るだろう、とアナリストらに語った。
 Oracleの最高経営責任者(CEO)であるLarry Ellison氏は、同社が当初BEAに提示した67億ドル(1株あたり17ドル)という買収価格は現在では高すぎると語った。

Oracleは10月の提示額をさらに引き下げる意向を示したわけだ。同記事を見ると、その事情はBEA従業員が将来退職する際のコストが高くなったためのように感じる。



発表のタイミングがまた絶妙だ。BEAの決算内容をOracleが事前に察知していたかどうかわからないが、BEAの決算発表よりも前にOracleがコメントを発表することで、BEAの気勢を制する効果を持ちえる。



Oracleがこうした強気のコメントを発表した裏には、上記のようなBEA買収のコスト増の要因に加え、個人的にはOracleの「交渉力の強さ」も影響しているのではないかと考える。10月の買収交渉の時、Oracle以上の買値を示す企業が現れなかったため、今後もOracle以外の買い手が現れる可能性は低い。であれば、OracleはBEAをもっと低い価格でも買えるじゃないかと。実際、BEAが得意としているアプリケーション・サーバーの分野で著名な企業と言えば、BEAの他にはIBMぐらいしか思い浮かばないが、IBMはBEAの対抗製品を持っているので直接BEAを買いに来る可能性は低い。であればOracleは買い急ぐ必要はない。一方のBEA側だが、BEAの株主自身が自社を売却するよう経営陣に要求しており、BEA経営陣は時間がないと推察する。時間に余裕がある方と余裕がない方、どちらが強い交渉力を持つかは明らかだろう。

 Ellison氏は、「われわれのミドルウェア事業は現在急成長を遂げており、もはやBEAなど必要ない(中略)われわれは急速にIBMに追い付きつつある」と述べる。
 Oracleにとっては、BEAの顧客にOracleのミドルウェアを購入するよう懇願するという時間のかかる方法を取るよりも、BEAを買収する方がより早く事業規模を拡大できるだろう。
 「われわれがBEAの買収を希望した理由は、同社の技術とは無関係だ。すべては事業規模の拡大が目的だ」(Ellison氏)
 また同氏は、規模の経済を手に入れることにより「莫大な利益の獲得」が可能になり、さらに1株あたり17ドルでBEAを買収することにより、その利益は大幅に増加する、と付け加えた。

いつものことだが、Larry Ellisonはとても強気だ。アメリカ的な資本主義、強気の資本主義を見る思いだが、交渉方法がとてもしたたかで巧みだ。交渉術というのはあまり気持ちいいものではなく、心情的には納得しがたいものもあるが、世紀のM&Aの事例として勉強にはなる。



ちなみに、BEAの時価総額は64億ドル(2007/11/16終値、約7千億円)。買収が成立したら今年の大型買収ランキングに登場しそうな規模だ。


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