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薄膜太陽電池が普及しそう [環境/クリーンテック]

米greentech mediaの報道によると、太陽電池市場においてThin Film型(薄膜型)太陽電池の地位が向上し、2012年には市場シェア40%に達するという。

引用: Thin-Film PV 2.0: Market Outlook Through 2012 2008/9/8

In the first half of 2008 alone, over $200 Million in venture capital was poured into the thin-film market, adding to the total of nearly $1 billion invested in the market since 2007. The report estimates that by 2012, thin-film could make up over 40 percent of worldwide PV production and approaching 10 GW of capacity.

薄膜型太陽電池への投資ペースは引き続き高くて、2008年上期だけで2億ドル、2007年からの累計で10億ドルにも達っし、その結果2012年までに薄膜型太陽電池による発電量は10ギガワット、市場シェアは40%に及ぶということだ。



参考まで、日本最大の太陽電池メーカーであるシャープの2007年の太陽電池生産量は363メガワットだ(発表資料)。先の10ギガワットという数字は、このシャープの生産量の約30倍にあたる。それだけの太陽電池が近い将来生産されるようになるというわけだ。



もっとも、シャープが堺に建設中の新工場は薄膜型で1ギガワットを生産する能力を持つといい、海外でも薄膜型の工場を建設中のため、これらを合わせるとシャープだけで合計6ギガワットの生産能力を持つらしい(発表資料)。シャープ1社が薄膜型太陽電池を6ギガワット分生産できるのであれば、世界全体で10ギガワットというのは控えめなのかも知れない。



ところで、英語圏での太陽電池の分類法と日本での分類法は若干違うようで(日本の分類はこちら)、どこかにちきんと対応関係を整理した文献があれば見てみたいのだが、英語でいうThin Filmタイプにはどうやら日本分類のCIS系、アモルファスシリコン型(≒薄膜シリコン型?)、有機薄膜系などが対応するようで、これらが先の10ギガワットを構成する太陽電池方式だ。この中でも特にアモルファスシリコン型が伸びるという。

First, while the last year has seen a burst of announcements of new amorphous silicon production lines ordered, the ramp time and output of those lines is somewhat less robust than perhaps was originally believed. The ramp delays should be temporary however, and amorphous silicon is expected to make dramatic gains in production over the next couple years.

また、最近の傾向としてVCや事業会社による多額の投資を受けたことで、薄膜型の成長曲線が加速しているという。

The second trend is that overall thin-film production projections are meaningfully higher than in last year’s survey, with all technologies outperforming by 2010 and beyond. Part of the reason for this was our overly conservative methodology, which did not allow for the fast ramp of fully commercial companies (like First Solar) that they had not already announced their future plans to 2010. However, the main driver is the massive amount of VC and corporate venturing capital that has poured into the industry in the last few years and the number of firms that have reached the commercial threshold because of those investments.

今後数年間はこれまでとは桁違いのスピードで太陽電池が普及すると見て良さそうだ。われわれの身の回りでもこれまで以上に太陽電池を見かけることが増えることだろう。




太陽電池は試練の時? [環境/クリーンテック]

米国VC業界ではここ数年クリーンテックへの投資が大いに盛り上がってきたが、変調の可能性を示唆するコメントが出てきた。

出典: Solar to hit speedbumps: Falling prices, rising supply and red tape (2008/3/20)

... Now Lux Research has put some numbers and reasoning to the pessimism, saying that solar will experience a shakeout in about two years’ time.

これまでもクリーンテックへの投資熱はバブルだとする意見はあったが、Lux Researchが数字を示した上で太陽電池市場が変調する可能性を説明している。

The situation so far has been that there’s more demand for solar cells, both silicon-based and thin-film, than there is capacity to make them. High demand has kept a competitive market from developing, in turn supporting companies with technologies that aren’t cost-effective — which, at the moment, means most of them.

これまでのところは太陽電池(シリコン系、化合物系とも。太陽電池の説明はこちら)に対する需要は製造能力を上回っており、作ったそばから売れていくような状況だったようで、その結果、多くの太陽電池製造業者はコスト削減が十分でないという。

There’s also been a shortage of polysilicon, the raw material used for many cells. That shortage will begin to ease right around the end of 2009, and the market will start flooding in 2010, according to Lux. That’s right around the time many manufacturers will be scaling up production, leading to demand for 8.96 gigawatts against a supply of 9.57 GW in 2009.

また、太陽電池の原料となるシリコンが不足しており、これが原因で日系を含む大手太陽電池会社が十分な太陽電池を生産できていないという話も聞くが、そうした状況は2009年の終わりには崩れ、2010年にかけてシリコンの市況が緩むという。その結果、多くの太陽電池会社は生産を拡大させるはずで、2009年に想定される太陽電池に対する需要8.96ギガワットに対し、供給が9.57ギガワットと供給過多の状況が想定されるという。

Crystalline silicon photovoltaics will be the hardest hit in this scenario, but the picture isn’t all rosy for thin-film technologies like First Solar’s cadmium-telluride and the CIGS that Nanosolar and others use. Those manufacturers will face a short-term challenge from the glut in photovoltaics until they can bring their own prices down.

シリコン系太陽電池はこの影響をもろに受けることになろう。薄膜型もコストダウンが求められよう。

... Overall, he says, the market is likely to move into a phase of acquisitions and mergers. Big companies like DuPont and Hitachi will likely try to buy their way in by picking up small companies, and as prices drop, some players will probably choose to join forces rather than toppling. Meanwhile, some crystalline silicon-based companies will try to buy up thin film manufacturers to diversify.

上記のような理由から、太陽電池業界は今後M&Aによる合従連衡が起こるフェーズに移るだろうと予測している。DuPontや日立といった大企業だけでなく、ベンチャー同士の合併もあるだろう。結晶シリコン型太陽電池企業による薄膜型ベンチャーの買収もありえそうだ。

So should anyone really be pessimistic about solar? Not unless they’ve invested in an unproven technology. The phase of torrid venture funding for solar is coming to a close, and some investors will end up getting burnt pretty badly. Others, though, still have a big payday to look forward to. Lux is predicting the market will grow at 27 percent a year, boosting it from $21.2 billion in revenues in 2007 to $70.9 billion in 2012.

では、悲観的になるべきかというとそうでもなく、太陽電池企業に投資したVCの中には目先痛手を被るところもあろうが、太陽電池市場は2007年の$21.2Bから2012年には$70.9Bまで年率27%で拡大を続けるため、生き残った企業は大きな果実を手に入れることが出来るだろうと説く。このように過熱と調整を繰り返しながらダイナミックに発展していく様はいかにもアメリカらしい。



ところで、太陽電池といえばシャープ、京セラ、サンヨー、三菱電機など日本にも強い企業が多い。残念ながらベンチャー企業はあまりここに登場していないのが寂しいところだが。近い将来太陽電池が価格低下に見舞われるとしたら、よりローコストで生産できる体制を整えたところが勝利すると考えるのが筋だ。大阪堺市に大規模な工場を建設中のシャープなどはその布石を打っているのかも知れない。ちなみに、シャープは2010年に薄膜太陽電池で1ギガワットの生産能力を持つという。2009年の予想需要である9ギガワットに比べて如何に巨大な工場を作ろうとしているかがよくわかる。





<参考>




電気自動車が熱い: 27のスタートアップ [環境/クリーンテック]

Frontpic1 アメリカやヨーロッパではTeslaに続けとばかりに電気自動車のスタートアップが盛んだ。27ものベンチャー企業がこの分野に挑戦している。信じられないことだが、まずはこちらを見て欲しい。

27 electric cars companies ready to take over the road

モーターショーあたりに出てきそうな近未来的でエコな形をしたモデルが多いが、中にはグラマラスなスポーツカーも目に付く。価格はやはり多少高めだが手が届かないわけではない。既に販売中のものも多い。



既に成熟していると思われる自動車産業においてさえこれだけのスタートアップが出てくるなんて、アメリカのダイナミックさに改めて感動せざるを得ない。現実的に考えて実用性に欠けるモデルもありそうだから今後淘汰が進む可能性も高いが、そのチャレンジ精神には目を見張るものがある。自動車大国である日本からも是非この分野に挑むベンチャーが登場して欲しいものだ。



ところで、熱い電気自動車だが、順風満帆というわけでもない。こんな記事がある。

Tesla’s layoffs: Bad blood, a bloodbath, or business as usual?

Following its ouster of founder Martin Eberhard and appointment of new chief executive Ze’ev Drori late last year, electric car maker Tesla Motors is going through a fresh round of layoffs, including several execs and members of its engineering team.

実はTeslaでは昨年暮れにCEOが交代していたのだが、今回はそれに引き続き26人がレイオフされるという。上記で引用したエントリーに載っているリストを見ると、レイオフの対象にVPクラスも含まれているのがわかる。Teslaには250人以上が働いていたようだから、約1割の人員を削減することになるようだ。このレイオフには賛否両論のコメントが寄せられているようで、不必要なものだとする否定的なコメントや、良くあることだとするコメントもある。Tesla内部で何が起こっているのかわからないが、自動車会社を立ち上げるのは楽ではないということか。



そんなTeslaだが、既にWeb上で注文を受け付けており、Waiting Listが作られているようだ。カリフォルニアのフリーウェイを疾走するTesla Roadstarを早く見たいものだ。


産業育成のための施策の好例: アメリカ政府によるクリーンテックVBの債務保証 [環境/クリーンテック]

アメリカのエネルギー省がクリーン・エネルギー企業に対して総額20億ドル(約2,300億円)の債務保証を行っているようだ。産業振興策としてとても興味深い。

出典: Fed seeks to spur green energy investment with guarantees

The Federal government is backing investments in clean energy projects, providing $2 billion in loan guarantees to 16 companies.

If the company defaults on its loans, the DOE will step in and repay the investors. The guarantees are meant to spur investment and increase investor confidence in clean energy projects.

米国政府はクリーン・エネルギー分野の起業意欲や投資意欲を高めることを狙ったようだ。



興味深いのは、この政府による支援が出資でも融資でもなく「債務保証」であることだ。債務保証とは、債務者が債務を返済できなくなったときに返済を肩代わりする契約のことで、今回の場合で言えば、ベンチャー企業が銀行などから融資を受け、事業に失敗して融資を返済できなくなったとしても、アメリカ政府がベンチャー企業に代わって融資を返済してくれるのでベンチャー企業は返済義務を免れる、という大変ありがたい内容だ。なぜ債務保証が興味深いかというと、下記のような理由による。



  • 政府はボトム・サイドのリスクを担保するが、アップ・サイドの利益を取ることはない。逆にベンチャー企業や投資家らはボトム・サイドのリスクが限定されている一方でアップ・サイドのリターンを狙える。
  • 政府が実際にお金を出すのはベンチャー企業の事業がうまくいかなかった場合のみ。うまくいけば政府は負担を免れる。
  • 債務保証は出資、融資ではないため、政府がベンチャー企業の経営に直接関与することはない。


つまり、起業家や投資家にしてみればリスクが限定されているのにリターンを狙える。債務保証したベンチャー企業のすべてが倒産することはないだろうから、債務保証額=政府の負担額、となるわけではない(もっとも、政府側でベンチャー企業を審査する担当官の能力が問われることにはなりそうだが)。政府が保証することでベンチャー企業が成功していけば米国経済の次世代を支える産業として国家への貢献も大きかろう。そんなわけで関係者すべてに利益が見込める施策と言えよう。



すでにクリーンテック関係の著名な企業らがこのプログラムの債務保証を受けているようだ。以前このブログで紹介したTeslaも入っている。

Applications for the guarantees were opened a year ago; recipients of the loan guarantees include Tesla Motors, Blue Fire Ethanol and Solyndra, a solar company. For the full list, see the DOE’s release.

さらに追加の債務保証を求めて希望者が殺到しているようだ。その数、143社!

Although 16 companies are receiving the guarantees, the pool of applicants included 143 companies asking for over $27 billion.

エネルギー消費大国アメリカは、クリーンテックを次世代の産業として国を挙げて取り組もうとしていることなのだろう。今回の施策はそんな国策を具現化するものとしてとても興味深い。



日本でも戦略的に重要な産業については、このようなプログラムがあってもいいのではないか。バイオやナノといった分野では昨今苦労しているVBが多いと聞くが、国家30年の計として政府のバックアップを期待したいところだ。



参考URL: http://www.lgprogram.energy.gov/press/100407.html


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Clean Techの波 [環境/クリーンテック]

アメリカを含む北米では2006年に29億ドル(約3,500億円)がクリーンテック系企業に投資されたらしい。これは、2005年より78%増、2004年の140%増だそうだ。原文はこちら参照。

Cleantech Venture Network® reported today that North American venture capital investment in the cleantech category totaled a record $2.9 billion for 2006, representing a 78% increase over 2005 cleantech investment of $1.6 billion, and a 140% increase over 2004 investment of $1.2 billion.

クリーンテックという言葉はやや曖昧で、日本語にすれば「環境系」という言葉が近そうだが、そこにはエネルギー関連(水素、電池、風力、送電、、、)やリサイクルと言った物が含まれるだろうし、CO2やNOx削減、水関係も含まれよう。原油価格はやや落ち着きを取り戻しているが、昨年の原油高を背景にクリーンテックへの投資が一段と盛り上がった。一度動き出した流れはそう簡単には止められない。



ちなみに、VECの調査によると、2004年度の日本のベンチャー企業への投融資額は総額1,968億円だという。アメリカはクリーンテックへの投資額だけで日本のVC市場を凌駕する規模の資金が動いていることになる。このように、新たな領域に大量の資金が投入されるあたりがアメリカの原動力になっている気がする。今後も目が離せない。


「水」のサミット [環境/クリーンテック]

水関係の会社への投資をテーマにしたカンファレンスが開かれる。「お水」というとちょっと違うニュアンスとなるが、ここで言う「水」はもちろん飲料水、工業用水、農業用水などのことだ。



Water Finance & investment Summitというのが11月にNYCで開かれる。



ついに水系投資もここまで来ましたか。個人的には興味津々。誰か一緒にやりましょう。


薄膜太陽電池の真打登場か? [環境/クリーンテック]

ガソリン価格が$3.5/ガロン(5年前の3倍!)に達した米国では、ガソリン価格に比例して代替エネルギーへの熱もアップしているようだ。



そうした代替エネルギー分野の企業の一つであるNanosolar社(本社米国パロアルト)が世界最大級の太陽電池工場を作ると言う。ベンチャー企業が自前で工場を持つだけでも意外だが、工場を中国やインドではなくてシリコンバレーに作ると言うからさらに驚きだ。工場建設に必要な資金も既に調達しているようだ($75m、約85億円!)。ちなみに投資家の顔ぶれは多彩で、通常のVCの他にヘッジファンドや保険会社等も含まれる。Google創業者の二人もシード期に投資していたらしい。工場を自前で持つのは利益率の向上や技術の社外流出を防止するという意味で正しい選択だ。しかし多額の投資が必要になるので通常のベンチャー企業にはこの手は使えない。Nalosolarはそれだけ桁違いだと見ていいだろう。



薄膜太陽電池はシリコン使わずに済むため、最近のシリコンの価格高騰や供給難の影響を受けずにすむ。製造プロセスも半導体のように蒸着などの複雑なプロセスでなく印刷技術を使うためそこそこ安価らしい。一方で光を電気に変換する効率が低いのが課題のはずだ。こうした薄膜太陽電池をどんなアプリに使うのかが楽しみだ。



Nanosolarに投資家を見ると日系からMitsuiさんの名前が見える。やりましたね。


盛り上がる風力発電 [環境/クリーンテック]

カリフォルニアをドライブしているとあちこちで風力発電の風車を見かける。数百本の白亜の風車がくるくると回る様子は壮観だ。近未来的な光景だが、宮崎駿のアニメチックでなんだか微笑ましい。



いったいどのくらいの発電をしているのか気になるが、"Nightly Business Report"によると

Today over 9,000 megawatts of wind power exist in the U.S. providing electricity to over 3 million homes

とある。つまり、全米の風車をあわせると9千メガワットになり、これは3百万世帯に電力を供給できる量になるそうだ。かなり大きな都市でも風力発電だけでまかなえることになる。さらに

And the fact is that the Department of Energy is looking for wind power to triple between today, where it only represents 2 percent of the energy in this country to 6 percent by 2020. So I think the industry has come a long way and is really maturing and has great potential for the future.

とある。現在風力発電が全電力量に占めるシェアは2%でしかないものの、エネルギー省はこれを2020年までに6%にまで高めようとしているらしい。もちろん、これだけでは現在主流のエネルギー源である石油を代替するには桁違いに足りないが、少しでも化石燃料の代わりを探さないとならないということなのだろう。



アメリカはCO2削減を目指す京都議定書を批准していないが、メディアや草の根レベルではガソリン価格の上昇(5年前の3倍!)と身近な異常気象の頻発(ニューオーリンズのハリケーン被害、カリフォルニアの100年ぶりの長雨、ボストンの大洪水、等等、、、)により、着実にエネルギー問題への関心を高めているようだ。



ベンチャーファイナンスというよりは、もっと大きなプロジェクトファイナンスの領域になろうが、この分野はまだまだ伸びると見ている。


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