「もうブログは止めちゃったんですか」的な問い合わせも頂きつつ、ありがたいことだと思いながらも、何となく気乗りしないでおりました。
「シリコンバレーから元気のいい話題をご提供」と思いながら「シリコンバレーの日々」を始めて早いもので7年目、業界の風景もあれこれと変わってしまったものです。投資家という立場から見るその風景は、幾多の流行り廃りがあり、プレーヤーの交代があり、成功した人もそうでない人もいて、何となく「諸行無常だなぁ」ってなことを思ったりしていたわけです。
ことに、個人的に自然エネルギー系に注目していたのですが、自然エネルギーのような大規模な資金調達を要する事業は総じてやや苦戦気味。太陽電池関係などはその筆頭で、この1年で多くのベンチャーが破綻していきました。SolyndraやらUniSolarといった著名どころだけでなく、比較的注目度の高かった下記の2社の破綻も伝わってきました。各社とも巨額の資金を投じてきただけに残念です。
Konarka : Thin-Film Solar Panel Maker Konarka Files For Bankruptcy
Abound Solar : Solar Firm Seeks Bankruptcy Protection
でも、元気の出る話もあれこれ出てきましたね。
最近の大きな流れと言えば、何といってもAccelaratorの方々の台頭でしょう。多くの著名なプレーヤーが出てきており、日本でも同じような業態が流行ってます。中でもAndreesen Horowitzさんあたりは惚れぼれしますね。理念がすばらしい上、$1.5Bという巨額のファンドまでお持ちです。シードから投資するファンドでこの規模は破格でしょう。これだけ大規模な金額を運用しきれるか? という疑問は残りますが(このあたりの疑問に対する回答はこちら)、信念を貫いて突っ走れるところは何と言っても頼りがいがある。今後、どこまで成長されるか、ますます注目です。
Facebookの上場の余韻がまだ残るシリコンバレー、引き続きソーシャルが重要な分野であることには変わりはないのですが、ソーシャルも、ソーシャル以外も、これからどこに向かっていくか、引き続き追いかけていきたいものです。
また折に触れてアップしていきたいと思います。
]]>そのZagatがGoogleに買収された。今後、GoogleのSearchやMapにZagatのガイド情報が表示されるという。買収額などは公表されていない。
引用: Google acquires Zagat, strikes a major blow against Yelp
September 8, 2011 | Sean LudwigGoogle has bought Zagat, the popular restaurant reviews service. The search giant announced the news on its company blog today and said users will immediately start seeing Zagat’s content integrated in Google searches and Google Maps.
Terms of the acquisition were not disclosed.
位置情報がらみのサービスはネット業界でも引き続き注目の成長コンテンツだが、レストランはそうした位置情報の中でも最重要だろう。Zagatのレストラン情報がGoogle Mapに出てくるとなればユーザとしても興味深い。
Zagatは創業以来32年立つそうだ。ミシュランとは違って、Zagatの評価は一般の人へのアンケートの回答により統計処理したものだという。ある意味でUser Generatedなコンテンツなのだが、書く人によってばらつきの出る「コメント」ではなく、評価を数値化していることが特徴だ。食べログも「星」を載せているが、これをもうちょっと高い精度でやっている、ということか。
アメリカでよく似たサービスにYelpがある。レストラン情報サイトとしてはこちらの方が有名で、利用者があれこれ口コミ情報を載せていく方式になっており、日本の食べログと同じだ。GoogleはこのYelpを2009年に$550M(!)で買収しようとしたが成立しなかった。で、Googleは諦めきれずに今回のZagatの買収になった、ということか。Zagatの通知化された評価というのは確かに強力だ。Yelpにとっては脅威になるかも知れない。
ネットの世界で巨大なプラットフォームを構築した企業は、世の中の各種コンテンツを次々に統合していく、、、紙媒体しかなかった創業32年の老舗企業がその対象になり始めたという意味では驚きだ。Google、Facebookなどを中核に、今後もこうした「ネットでない会社のネットへの統合」が普遍的に起こるのだろう。日本のDeNAやGreeがこれにどこまで対抗していくか、動向を注視したい。
ところで、日本人である私としては、Zagatもいいのだが、Surveyに写真が一つも出てこないのはいつも取っつきにくいなぁと感じている。お願いだからレストランのメニューやサイトにもっと料理の写真を掲載してくれ、と言いたいのだが、これは文化の問題か。。。
誰か、アメリカのレストランのメニューに写真を載せるサービス、始めてみませんか? ウケると思うんだけどなぁ。。。 もっとも、アメリカのレストランでは、ステーキといえばステーキであって、誤解のしようもない。写真を見ても見なくてもあまり変わらないか。。。
]]>グリーンテックビジネスに興味のある小職としては、グリーンビジネスが盛り上がりそうな話はどちらかと言えば歓迎であり、「脱原発」も否定はしない。しかし、「脱原発」を進める上で重要な「電力買取制度」の中身があまり検証されてないようで気になる。これをきちんと議論しないで話を進めるのは危険だと考えている。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、たいていコストが高い。一般家庭向けの現行の電気料金の価格は概ね20円台/KWhくらいなのだが、例えば太陽光発電のコストはこれよりもかなり高い(下記参照、ちょっと古いけど)。
引用: 太陽光発電のコスト
(省略) 。。。平成17年度における設備容量1kWあたりの平均価格(税抜68.4万円/kW:参考データ参照)を用いて、償却年数20年で計算した場合、利子や保守費用まで含めた太陽光発電量あたりのコストは47~63円/kWh程度と算出される。
今後、太陽電池等の再生可能エネルギーのコストが下がって、将来的には現行の電力価格と同程度になるという可能性はあるのだろうが、それがいつになるかはまだ見えない。再生可能エネルギー由来の電気の価格が一般の電気料金よりも高いうちは、これを促進させるためには「電力買取制度」が重要となってくる。例えば、太陽光パネルを設置した人は、設置から10年間ぐらい、電力会社に対して余剰電力を42円/kWhで販売できる、というような制度だ。
引用: 買取制度ポータルサイト
資源エネルギー庁 再生可能エネルギー推進室太陽光発電の余剰電力買取制度平成23年度の買取価格が住宅用(10kW未満)42円/kWh等、住宅用(10kW以上)及び非住宅用40円/kWh等に決まりました。
(同サイトから引用)
太陽光パネルを設置した人は、上記のような電力の販売によって収入を得ることが出来るので、太陽光パネルの設置コストの負担を軽減することが出来る。こうしたインセンティブを出すことによって、太陽光パネルなど再生可能エネルギーを政策的に促進しようという訳だ。
これはこれでよく出来た政策だと思う。ただ、この政策によって「得をする人」と「損をする人」が出てくることが問題だ。
「得をする人」は、自宅の屋根に太陽光パネルなどの再生可能エネルギーの設備を設置して電力を売った人、そうした再生可能エネルギーの関連業者(太陽電池メーカーや施工業者)などだ。太陽電池や風力発電を大規模に行う事業者にも買取制度が適用されるとした、そうした事業者も得をする部類に属することになるだろう。(例えば○○○バンク)
一方、「損をする人」は買取制度によって上乗せされた電気料金を払わなければならない人だ。
買取制度による電気料金への上乗せ分は、例えば下記のように、標準家庭で月10~100円程度と試算されている。月10~100円ぐらいというのは、高いのだろうか、安いのだろうか。。。
引用: 太陽光サーチャージ(太陽光発電促進付加金)
標準家庭の月額負担は10~100円一般電気事業者が太陽光発電の余剰電力の買取りを行う費用は、「太陽光発電促進付加金(仮称「太陽光サーチャージ」)」として、電気料金に上乗せし、すべての電気利用者が公平に負担する。太陽光サーチャージの季節変動を抑えることや自由化部門の契約期間が通常1年であること等を考慮し、前年度の買取総額を次年度に回収するスキームとする。
買取制度は平成21年11月からスタートするため、その費用を回収する太陽光サーチャージは、平成22年度当初より導入される。導入当初の負担額は、試算の結果0.1円/kWhとなり、標準家庭での負担額は月10~100円程度になる見込み。太陽光発電システムの設置者の増加に伴い買取総額も増えるため、年度を追うごとに一般家庭をはじめとする電力需要家の負担額も増えていく。
仮に、標準家庭の費用負担がざっくりと月100円、年1千円になったとした場合、買取制度で使われる10年間をかけると、1家庭当たり10年間で「1万円」を負担している勘定だ。これって本当に「安い」のだろうか?
そもそも、この「月10~100円」という試算は果たしてどのような前提で出てきたものが疑問だ。
きちんとした裏付けを取れていないのだが、電力買取制度が先行しているドイツでは、この制度によって電気料金が「2割程度」高くなったという説がある。電力買取制度によって、太陽光パネルの設置が進み、太陽電池メーカーや関連業界は大いに潤ったのだが、その代償として太陽光パネルとは何ら関係のない一般庶民の電気料金が2割上がったという。予定よりも多くの電力を買い取ることになってしまったからなのか、そのあたりの背景は不詳なのだが、事例としてよくよく研究する必要はありそうだ。
電力買取制度によって太陽光などの再生可能エネルギーが普及し、それによって全国民の電力料金が下がり、全国民がその恩恵を受けられるのであれば、電力買取制度は「正しい政策」と言えるだろう。
しかし、再生可能エネルギーを普及させても電力料金が下がらず、再生可能エネルギーに携わる人だけが潤い、そうでない人がコストを負担するだけで終わるのだとしたら、果たしてこれは「正しい政策」と言えるだろうか。
再生可能エネルギー政策は前向きに進めるべきだと思うが、電力買取制度によって国民が負担すべきコストの試算は重要だ。内容を分かりやすく国民に開示した上で、大いに議論すべき重要課題だろう。
]]>「日本の未来について話そう - 日本再生への提言」とする本で、マッキンゼーが監修し、日本・世界の著名人65人が日本の未来について語ったものだ。
内容はとても深い。日本をよく知る65名が、様々な角度から日本人の民族性、人生観、歴史に触れ、日本人とは何か、日本が成功してきた経緯、バブルとその後の失われた20年、さらに東日本大震災という未曽有の危機を受けて、日本人はこれからどうすべきか、日本はこれからどこに向かうべきかについて提案している。
全体を通じて一貫しているのは、「日本人への熱きエール」だ。日本の将来について、次々と前向きな発言が繰り出される。65名もの方々の提言をまとめただけに全体の文字数は多いが、是非とも一文一文を丁寧に噛みしめながら読んでみたい。読破するには時間がかかるが、その価値がある本だ。
個人的にはマサチューセッツ工科大学名誉教授のJohn W. Dower氏の文章は開眼の思いだった。
読み進めるうちに元気が出てくる。また、何かをしなければならないという気分になることだろう。
この本を題材に、あちこちで議論が盛り上がることを期待したい。
「なでしこジャパン」のように、改めて日本を元気にしよう!
Carlyleは世界有数のPEファンドで、資産規模は1,000億ドルを超える(約8兆円!)。日本でもバイアウト分野を中心に多くの実績を積んでいる超有名ファンドだ。そんなCarlyleがIPOを目指しているという。
引用: Carlyle Aims for IPO to Boost Buyout-Fund Capital, Conway Says
By Cristina Alesci - Dec 7, 2010 12:55 AM GMT+0900William Conway, the deal maker who helped build Carlyle Group into the world’s second-biggest private-equity firm, said the company is gearing up for a public share sale to amass permanent capital and contend with the growing challenge of raising money for buyout funds.
PEファンドの上場は珍しいことではないようで、Blackstone GroupやKohlberg Kravis Roberts & Co.といった大手ファンドも株式市場に上場している。とはいうものの、資金を数年単位で運用するPEファンドが、新たな資金を株式市場から調達するというのはどうも違和感がある。
Carlyleのような世界有数の資産を持つファンドが、IPOでいったい何を狙っているのか。
引用: Carlyle to raise $1bn in weak IPO market
By Henny Sender in New YorkCarlyle, the private equity firm with $108bn under management, plans to raise more than $1bn with a initial public offering of stock but is likely to come to the market with a lower-than-expected valuation, according to bankers familiar with the matter.
FTの記事によると、CarlyleはIPOによって10億ドルの資金調達を狙っているとのこと。この記事を見る限り、資金調達目的のIPOのようだ。私の勝手な想像では、儲かっている大手PEファンドは「投資家、門前に列をなす」ような状況で、いろいろと大変な公募などしなくとも、私募でいくらでも資金が集まるようなイメージを持っていた。しかし、そうした簡易な私募ではなく、公募によって資金を調達したいらしい。
PEファンドが上場することで、公募による資金を調達して新たな投資を行うことで企業価値を高める、という成長シナリオはありえるのだろう。しかし、株式上場後に株主となる人の中には、短期的な株価上昇を狙っている人もいるはずだ。そうした短期思考の投資家から、即効性のある株価上昇策を求められ、ファンド運用が長期思考から転じて短期思考に陥る懸念はないのだろうか。
日本でもしばしば公開企業による「株式の非公開化」が目につくが、そんな際に必ずと言っていいほど登場するのがPEファンドだ。公開会社が、PEファンドの資金によって短期思考の投資家の圧力から解き放たれ、長期的視点に立って更なる成長を目指す、というのが株式非公開化の重要な目的だ。つまり、PEファンド(バイアウトファンド等)は、株式市場よりも長期的な視点に立つことに存在価値があった。そうした、PEファンドが自ら上場して株価変動の波にさらされるとしたら、果たしてPEファンドはこれまでどおり長期的視点に立てるのだろうか?
PEファンドが公募によって資金を調達する際には、こうした短期思考化が懸念されるわけだが、それでも公募に頼らざるを得ないのだとしたら、その理由は何であろうか。
PEファンドを取り巻くマネーの状況が変調してきた、ということだとすると、根が深い。
]]>引用: BrightSource re-files for IPO
13 June 2011Solar thermal project developer BrightSource’s initial public offering (IPO) on Nasdaq looks set to go ahead imminently, after the company filed an amended registration statement to the Securities Exchange Commission on Thursday
BrightSource Energyは、巨大な敷地に何百枚(?)もの大型の鏡を敷き詰めて太陽熱を集め、その熱でタービンを回して発電する発電事業を展開している。業績は赤字ながら、米国政府から$1.6B(約1,300億円)もの債務保証を受けており、資金力は絶大だ。ベンチャー企業と呼べるかどうか微妙だが、IPOが実現すれば、グリーンテック系ベンチャーのIPOとしては今年最大級になるのではないか。その動向に大いに注目したい。
参考: 関連エントリー
]]>とはいうものの、東証AIM開設以来なぜ2年も上場銘柄が出てこなかったか、栄えある1号銘柄のJ-Nomadが日系証券会社でなかったのはなぜか、改めて東証AIMの課題が浮き彫りになったのも事実だろう。
■J-Nomadは責任重くて割に合わない?
東証AIMに上場する企業は、「指定アドバイザー(J-Nomad)」の支援を要する。実績が少なく信用力の弱い企業は、通常は単独での上場など難しいわけだが、そうした企業であっても、指定アドバイザーの力を借りることで上場できる道を作り、新興市場を活性化と、ひいては日本のベンチャーを元気づけようと考えたのであろう。こうした指定アドバイザー制度の仕組みを導入したことは、信用力の低いベンチャーの株式公開に道を開いたという点で高く評価されるべきだ。
しかし、「投資の自己責任原則」を考えると話が込み入ってくる。
指定アドバイザーの支援を受けて上場した企業が、その後上場廃止になったり破綻した場合、その企業に投資した投資家は損害を被ることになる可能性が高いわけだが、そうした損害は果たして100%その投資家の自己責任なのだろうか。それとも「指定アドバイザー」も何らかの責めを負うべきなのだろうか。
株式投資は「自己責任」が原則だ。東証AIMであろうと他の市場であろうと、株式投資した企業が破綻したことでその株主=投資家に損害が発生するとしたら、それは投資家の責任であって他のだれの責任でもない。投資家が適切な投資判断を行い得るよう、情報開示の公正さを担保することが極めて重要なのだが、それが確保されていれば、投資するかどうかを決めるのは投資家自身であり、その結果についても責任がある。投資によって利益が発生すればそれは投資家が享受すべきものだし、損失が出ても同じように投資家はそれを甘受しなければならない。株式会社とはそういうシステムだ。
東証AIMに上場した企業であっても、仮にそれが破綻して投資家に損害が発生するとしたらそれは投資家自身の責任だ。情報開示が正しく行われている限り、指定アドバイザーが何らかの責めを負うべきものではなかろう。
とはいうものの、破綻企業にかかわった指定アドバイザーに対して、日本の投資家はどう反応するであろうか。投資の自己責任論が脇に追いやられ、「破綻するような企業を支援する指定アドバイザーが悪い」というような議論が出てきたりしないか。こうした「紹介者責任」ともいうべき習慣があることで、誰も紹介者になろうとせず、上場のチャンスを得られずにいるベンチャーがあるとしたら不幸なことだ。
東証AIMは日本の証券取引所であるわけで、当然のことながら日本の証券会社の奮起が期待されたであろうが、上記のような紹介者責任を問われるとしたら証券会社も動きづらいことだろう。1号案件の指定アドバイザーが日系証券会社ではなく海外勢であったのは、そんな背景と無縁でないのではなかろうか。
■機関投資家の参加は期待薄?
東証AIMへの上場は、他の市場に比べて成熟度が低い段階でも公開可能であることから、東証AIMでは「プロ投資家」のみの参加を前提にしている。プロ投資家であれば、上記のような紹介者責任に絡む話は無縁だということなのだろう。
そのプロ投資家とは誰なのかと言うと、東証の表現を借りれば、下記の者のようだ。
TOKYO AIMは、金融商品取引法の改正により導入されたプロ向け市場制度に基づく市場です。
制度上、TOKYO AIMにおいて直接買付けが可能な投資家は、特定投資家及び非居住者に限られます。一般投資家は取引所に直接買注文を入れることはできず、投資信託等を通じて、市場に参加することとなります。(何らかの理由でTOKYO AIMの上場株式を保有している一般投資家がTOKYO AIMを通じて売却することは可能です。)
特定投資家の定義は、金融商品取引法上、以下のとおりです。
- 適格機関投資家(金融機関など)
- 上場会社
- 資本金5億円以上の株式会社
- 政府・日本銀行
- 地方公共団体
「みなし」特定投資家(証券会社への申出、確認が必要)
- 上記以外の株式会社
- 3億円以上の金融資産及び純資産を持ち、金融商品について1年以上の取引経験を有する個人
ざっくり言えば、プロ投資家とは、機関投資家や大会社、あるいは証券会社に申出・確認した人のようだ。ちなみに非居住者であれば無条件に取引に参加できるところが面白い。非居住者で東証AIMの株を買うような人はプロしかいまい、ということか、、、
では、本当に東証AIMにプロ投資家は入ってくるであろうか。
日本の既存の新興市場(東証マザーズ、大証ヘラクレス等)の主要プレーヤーは個人投資家のようで、機関投資家の影は薄い。既存新興市場よりもさらに小規模な会社でも公開できる東証AIMにプロ投資家の資金を呼び込むことは可能だろうか?
■グロースファンドの出番では?
東証AIMの位置づけや狙いが何かによるが、それが「既に会計上の業績を実現しており今後も成長を見込める企業」ではなく、「まだ会計上の業績を実現していないが今後の成長を見込める企業」に対して資金調達の道を開いたものだと考えるとわかりやすい。東証AIMは東証1部、2部やマザーズと言った他の市場よりも早い段階での株式公開が可能な市場だということになる。(この考え方が間違っているとしたら、どなたが適切な考え方をご教示ください)
そうした早い段階の企業に投資する投資家は、通常の上場企業への投資とは別の知見が必要になるはずだ。生損保や銀行・証券といったところで上場株に投資している方々のノウハウとは少々違ってくるのではないか。過去の会計情報はあまり役に立たないだろうし、ましてやPERやPBRを見て株価が高いの安いのという世界ではない。
これって、専門性を持ったファンド、たぶんグロースファンドのようなものの出番ではないか?
東証AIMに上場する企業に投資し、何年後かに本則市場に上場する際に売却するような収益モデルが考えられる。日本のVCには資金を持て余しているファンドもありそうだ。あるいは新規分野への参入を考えたいファンドもあろう。そうした諸氏にとって、東証AIM上場企業に投資するファンドというのは一考の価値があるのではないか。東証AIMは「プレIPO」市場だと割り切り、東証AIMに求められるノウハウに長けたプレーヤーの参加を促すという考え方があってもいい。
グロースファンドによる東証AIM活性化、そんな考えはいかがであろうか。
]]>引用: Groupon Plans I.P.O. With $30 Billion Valuation
June 2, 2011As Groupon would say, the deal is on.
The social buying site on Thursday filed to go public, a hotly anticipated debut that could raise $3 billion, according to two people close to the company who were not authorized to speak publicly. At that level, the company would be worth roughly $30 billion, surpassing the value of Google at its initial public offering.
2004年にGoogleが公開した時の時価総額は$27Bだったが、Grouponに$30Bの価格がつくとしたらGoogleをも凌駕する驚くべき数字だ。ちなみにGoogleのIPOも当時は随分と話題になったもので、Googleの社員からミリオネアが続出し、皆さんシリコンバレーで新たに住宅を買いあさったものだから、シリコンバレーの不動産価格が一気に高騰したなんて噂も流れたものだ。Grouponの社員は8,000人いるというが、さぞかし世界各地の不動産市況に影響を与えることだろう。
しかしながら、果たして$30Bのバリュエーションは妥当だろうか?
TechCrunchに分析が載っているので引用させていただくと、
引用:Groupon、IPO申請書に基づく年間収益予測は驚異の$2.6B
ついにGrouponが今日IPOを申請し、同社の財務状況があらわになった(リンク先に財務情報全文がある)。Grouponは驚異的ペースで成長を続けている。昨年同社の収益は2万2000%増の$713M(7億1300万ドル)だった。そして、2011年第1四半期だけで、昨年1年間の収益にほぼ匹適する$644M(6億4400万ドル)を上げている。これは前年同期比1万3575%増である。
創業2年目の2010年は売上$713M(約60億円弱)という驚異的な数字を記録し、2011年第1四半期だけで$644Mというから2010年1年分に匹敵する売り上げを記録している。成長スピードは驚異的だ。
しかし、大赤字でもある。2010年は$456Mの損失、2011年第1四半期も$147Mの損失と、大赤字の連続だ。
2008 2009 2010 2011Q1 売上高 94 30,471 713,365 644,728 売上総利益 5 10,929 279,954 270,000 純利益(損失) -1,542 -1,341 -413,386 -113,891 (単位:千ドル)
2010年はざっくり言って$700M弱の販管費を使っているようで、同年の売上高に匹敵するレベルだ。2010年の平均従業員数が何人であるか不明だが、仮に7,000人とすれば、単純計算で従業員一人当たり100k(約8百万円)を売り上げ、同じく100k(約8百万円)の販管費を使ったことになる。
これって、果たして儲かるビジネスなのだろうか?
急成長によって市場を一気に制覇し、その後で高収益体質に移行する等の手はあると思うが、その段階に移行するまで順調に資金調達出来るかどうか、更に急成長に伴う数々の課題(「スカスカおせち」は記憶に新しい)を如何にこなしていくか、マネジメントの巧拙が問われるところだ。
いろいろと課題はあるものの、話題性たっぷりだ。今後の動向に注目したい。
]]>原子力を代替する手段として注目を集める太陽光発電だが、その中でも事業規模の大きさが特徴の「集光型太陽光発電」における著名企業2社で新たな動きがあった。
BrightSource Energy社が$201Mの資金調達をした。シリーズEラウンドだそうだ。
引用: BrightSource Raises Another $201M for Solar Thermal
Greentech Media, March 31, 2011BrightSource Energy of Oakland, Calif. has raised $201 million in a Round E, bringing its total funding to more than $530 million in private equity. That funding is in addition to a federal loan guarantee of $1.3 billion. The investors include Alstom, a French power plant player, as well as the usual suspects -- Vantage Point Venture Partners, Alstom, CalSTRS, DFJ, DBL Investors, Chevron Technology Ventures, and BP Technology Ventures, together with new investors.
BrightSourceは今回の調達額を含め、累計で$530M以上を集めたようで、更に連邦政府から受けている13億ドルの債務保証を合わせると、総額で18億ドル(約1,500億円)もの資金を集めたことになる。アメリカのベンチャー投資の規模は総じて日本よりも大きいが、ここまでの規模になる例はそれ程多くない。ベンチャー投資というよりは、グロース投資、あるいはインフラ投資というべきだろう。投資家の顔触れはVCではVantagePointやDFJ、金融系ではMorgan Stanley、事業系では石油会社のBPやChevronが入っている。Googleも出資しているようだ。ピカピカの顔触れだ。
これだけの資金を投じたこともあり、やることもデカイ。集光型の太陽光発電(太陽熱発電という方が正しいでしょうね)のプラントを米国のあちこちに持っているようで、1ギガワットを超えるクラスの発電設備に複数関与しているようだ。ちなみに、福島原発の発電機6機を合わせた出力は4.7ギガワットになるらしいが、福島第1原発全体の規模と比べると、1ギガワットという出力の大きさがなんとなくイメージできる。
発電出力は大きいが、それなりの資金をつぎ込んでいる。果たして発電コストがどうなるのか気になるところだが、政府の支援も取り付けて脇目も振らずに突き進むあたり、いかにもアメリカ的だ。この会社がいくらでIPOするか、非常に注目される。
アメリカにはこんなBrightSourceのような注目のベンチャー企業もあるわけだが、その一方で静かに退場していく企業もある。
引用: Emcore Acquiring CPV Firm Soliant for $450K
Greentech Media, March 28, 2011
Emcore (NASDAQ:EMKR) is acquiring Soliant, the rooftop concentrated solar company, according to a reliable source. We're awaiting a response from the involved parties but have gotten a verification from other sources close to the deal.
And the sale price is, drumroll please, $450,000.Soliant had raised more than $29 million in venture funding from Rockport Capital, Nth Power, Rincon Venture Partners, Convexa, Trinity Ventures, and GE Energy Financial Services.
Soliantという集光型太陽光発電(こちらは太陽電池タイプ)の会社が45万ドルで売却されたという記事が出された。Soliantは$29Mの資金を集めながら、ほとんど二束三文で売却されてしまったことになる。投資家の顔触れも決して悪くなかったし、有名な企業だったが残念な結果だ。
原発をめるぐ今後の方向性がぐらついている中で、日本でも海外でもクリーンエネルギーに対する期待が高まる方向にあることは間違いなかろうが、一筋縄でいくものでもない。成功するまでのコストは大きく、失敗するリスクも少なくない。肝を据えて取り組む必要がある分野だ。
]]>福島原発の状況も気になる。関係者の命がけの行動により、事態は着実に改善の方向に向かっているように見えるが、報道を見る限り、引き続き乗り越えなければならない障害はまだまだありそうだ。危険な環境下で作業をされる方々をどのように応援したらいいかわからないが、一市民としてただひたすら彼らの成功を信じている。
ところで、今回の原発の事故により、世界中で原発の是非に関する議論が沸き起こっているのは皆様ご承知の通りだ。福島の現状を見れば、人類の英知など所詮自然の前では無力なのだから、「原発を止めろ」というのもごもっともな意見だ。しかし、原子力が日本や世界のエネルギー源としてどの程度貢献していたかを踏まえないと、そう単純に割り切れるものでもない。
資源エネルギー庁のエネルギー白書によると、日本の1次エネルギーに占める原子力の割合は10%程のようだ。新エネルギー・地熱も3%ぐらいあるという。
引用: エネルギー白書2010 (資源エネルギー庁)
(前略 )一次エネルギー国内供給に占める石油の割合は、2008年度には、41.9%と第一次オイルショック時(75.5%)から大幅に改善され、その代替として、石炭(22.8%)、天然ガス(18.6%)、原子力(10.4%)の割合が増加する等、エネルギー源の多様化が図られています。
上記は日本の「エネルギー」の供給源全体の話だが、電力に限ってみると原子力の貢献度は大きくて、3割くらいにも上る。
引用: 日本の発電電力の構成について (資源エネルギー庁)
日本の全発電量の3割に上る原子力を廃止しようと思ったら、これに代わる発電手段を見つけるか、あるいは電力量を3割減らしても経済水準を維持できる社会構造・産業構造を作るかしかない
手っ取り早いのは火力発電の割合を増やすことだと思われるが、CO2削減の議論があるなかで石油や石炭を燃やす火力発電を増やすことは、地球温暖化の観点からは大いに問題だ。
ベンチャーの立場からすれば、太陽電池、風力発電など、既存のエネルギーを代替する新たなエネルギーのニーズが高まることは間違いなかろう。しかし、そうした新エネルギーの発電コストはまだまだ高く、現在の技術水準の延長では全発電力の3割を代替するなどと言うのはありえない。何か画期的なブレークスルーが必要だ。資金、人材など多くの資源を投入する必要があろう。
原子力発電をどうするか、容易には答えを見いだせそうにない。しかし東日本大震災が起きたことで、非常に大きな転換が起こるかも知れない。この未曽有の危機を乗り越え、エネルギーの新たな枠組みをいち早く実現し、日本の国力アップにつなげたいものだ。
]]>ブログ開設が2005年秋でしたので、約5年半で10万の大台に到達です。ざっくり言って、年間2万アクセス、月間2千アクセス弱、毎日50~100くらいのアクセスを頂いていることになります。
これも皆様にご愛読頂いた賜物。感謝感激雨あられ、、、
最近は更新頻度が控えめでしたが、これを励みに今後も更新を続けていきたいと思います。
by キャピタリスト
]]>今週、Twitterの共同創業者Biz Stone氏が語ったところによると、少なくともしばらくはIPOする気はないらしい。
引用: Twitter's Stone: no IPO or funding talks
(Reuters) - Twitter has no plans to go public any time soon and does not need additional funds because it is making money, the co-founder of the popular microblogging site said.
IPOする気はないし、当面は資金調達も不要だという。更にJPMorgan ChaseがTwitterの株式10%を4.5憶ドルで買い取りたいとオファーしているらしい。実際に売買がなされるか不明だが、Twitterの時価総額は45億ドルと評価されたことになる。
Stone also dismissed speculation that JPMorgan Chase & Co was in talks with Twitter to buy a 10 percent stake for $450 million, which would value the company at $4.5 billion.
ちなみに、Twitterは財務内容を公開していないが、eMarketerの調査によると、2010年の売り上げは45百万ドル(ほぼ広告収入か)、2011年は150百万ドルに達するかもしれないという。
PSRでいえば、2010年ベースで100倍!、2011年ベースで30倍だ。
引用: Industry tracker eMarketer said in January that Twitter likely generated an estimated $45 million from advertising in 2010 and could generate about $150 million this year. The startup does not disclose its financial information.
ちなみに、非公式な情報だが、今週、SharesPostから送られてきたNoticeによると、SharesPostの仲介により、TwitterのB優先株35,000株について34.50ドルで売買が成立したという。
SharesPostのデータを元にTwitterの発行済株数を推計すると2010年12月時点で233百万株となるが、34.50ドルの株価がついたということは、時価総額は233百万株×34.50ドル=約80億ドルと、さらに高騰したことにな。妥当な時価総額とは思えないが、それだけ人気を集めていることだろう。
こうした未公開株式の売買事例は、ベンチャー企業への投資ラウンドに多大な影響を与えていくことだろう。未公開の段階で売買できる手段が増えてきたら、株式公開の意義ってなんだっけ? ということになりかねない。情報開示が十分でない中で株を売買するわけだから、それなりにリスクも高いはずだが、急成長していることが明らかな企業の場合には、細かな情報開示がなくとも現実に売買が成立してしまうのが現実だ。
情報開示やら内部統制やら、公開企業に求められる規制は少なくないが、そんな「重たい」規制を後目に、未公開企業の株式があちこちで流通するとなれば、新興市場の位置づけやあり方が問い直されることになりかねない。アメリカにおいてすら、、、、
いわんや、日本においてをや、、、
]]>さて、そんなFacebookは今年1月に15億ドルの資金調達を発表して話題になった。調達額の巨大さでも注目だが、時価総額も既に驚くほど高騰している。未公開株の売買を仲介するSharespostではFacebookの時価総額は1月29日現在828億ドルを記録している。日本円にすれば約8兆円だ。未公開企業のため財務データや発行済株数などに関するデータは見当たらないが、時価総額の点でも間違いなく既に巨大企業になっていると言えるだろう。
FacebookVenture-Backed Index Value
一方、同じソーシャル系企業の中からIPOに向けてFilingを完了したのがLinkedInだ。ソーシャルグラフの著名企業で、経歴+人脈を可視化することでその人のバックグランドが一目でわかるようなツールを提供している。転職が盛んな欧米では大人気で、日本人ビジネスマンも多く登録している。IPOにより175百万ドルの資金調達を目指すと報道されている。
引用: FT.com : LinkedIn looks for boost with IPO
LinkedIn, the business-focused social network, has filed registration documents for an initial public offering that could raise $175m, as it seeks to take advantage of investor appetite for internet companies even before it shows sustained profitability.
注目の時価総額だが、まだFinling情報を見てないため詳細はわからないが、先のSharespostでの取引実績ではLinkedInの時価総額は$25億ドルだ(1月29日現在)。
LinkedInVenture-Backed Index Value
業績だが、先のFTの報道では2010年の売上は前年比2倍の勢いで、1-9月の9カ月で161百万ドルという。年間売上見込みを250百万ドルと見積もると、時価総額は既にPSR=10倍のレベルに達していることになる。
The LinkedIn prospectus filed on Thursday said the company’s revenue doubled in the first nine months of 2010 from the same period a year earlier, to $161m, though it expects that rate of increase to slow.
It reported $1.9m in profit attributable to common shareholders during that period and said it did not expect to be profitable in 2011 on a GAAP basis.
公開企業は、だれでも株式を購入できることが前提となっており、これを実現するために各種制度、たとえば会計基準が決められ、情報開示が義務付けられており、、そうした開示情報を理解したうえで誰でも(安心して)株式を売買出来るようなシステムになっているわけだ。
しかし、公開企業がIRでどれだけ細かく情報を開示したとしても、発行会社の情報をすべて開示しつくすことは出来ない。たとえば、営業の現場でどのようなことが起きているか、会社の内部にいる人(インサイダー)にはわかっているが、外にいる人(アウトサイダー)にそれらのすべてが開示されるわけでもなく、情報量に差ができてしまい、情報が非対称にならざるを得ない。だからこそ、インサイダーの株式売買は厳しく規制される。アウトサイダーは、開示される情報を元に株を買ったり売ったりするわけだが、開示情報に載っていないことは知る由もない。
一方の未公開企業は、極論すれば株主も経営陣も含めて関係者はすべてインサイダーであり、株主と経営陣との間の情報の非対称性は少ない。株主と経営者は関係が深いことが多く、特に急成長を目指すベンチャー企業では株主が積極的に経営にかかわって支援することがしばしば行われたりしており、株主と経営が部分的に同一なものと見ることが出来る。「インサイダー」というと、なんだかイメージが良くないが、難しい市場環境の中で事業を拡大させるには、株主も経営陣も一体となって総力戦で経営にあたる方が機動的に動けるものだ。
公開企業には、資金調達しやすいとか、社会的な信用がアップするとか、取引がしやすくなるとか、いろいろとメリットもある。しかし、昨今の日本の株式市場の低迷には、「日本の会社が成長するように見えない」という漠然としたイメージがあるのではないか。いくらIRで示したところで、ビジネスの現場で行われていることは伝えきれない。公開企業であるよりも未公開企業である方が機動的な経営が出来る場合もあるかも知れない。
日経ビジネスの最新号で「新興市場は壊死寸前」なんて書かれているが、場合によっては非公開化を伴う再出発のような話が増えるのが必然なのかもしれない。
]]>Tesla Mortorsと言えば数年前から盛り上がってきた電気自動車ブームの中心的存在で、スポーティな電気自動車が有名だ(関連記事)。最近ではトヨタ自動車が出資して話題を呼んだ。
Yahoo Financeによると、売上は111百万ドル、約100億円ちょっとあたりだ。1年間の売上成長率がプラス659%とあるから、7倍以上に膨らんだようだ。(下記参照)
出典: Yahoo Finance
Financial Highlights | |
Fiscal Year End: | December |
Revenue (2009): | 111.90 M |
Revenue Growth (1 yr): | 659.30% |
Employees (2009): | 514 |
IPOに伴う公募予定価格は14~16ドルだという。米証券取引委員会(SEC)に開示されている資料によれば、発行済株式数は普通株が約60百万株、優先株(AからEまで)が約209百万株の合計269百万株となっており、仮に公募価格を$15とすると、公募価格ベースの時価総額は約40億ドル($15×209百万株、増資前)となる。(訂正:16億ドルとの説が流れている)
売上高1億ドルに対して時価総額40億ドルとは、不景気も吹き飛ぶ高額さで非常に注目される。もちろん、今後注目される高級セダン"Model S"なども含めた業績急拡大を期待した数字であろう。この価格設定には米国内のメディアでも諸説あるところだが、今後の動向に注目したい。
ちなみに、先にリンクしたSECの情報では日本の目論見書よりも細かな情報が開示されているので雰囲気だけでも皆さんに味わって頂きたい。公開企業の情報開示に対する意識の差を感じる。
ところで、Teslaの陰で、IPOを延期した著名企業がある。太陽電池の注目ベンチャーSolyndraだ。
Solyndraは米国期待の太陽電池モジュールのベンチャーで、円筒形の太陽電池モジュールで高効率な発電を目指している。これまで$950百万ドル(約900億円)の資金を調達し、加えて米国政府(エネルギー省)から$500百万ドル以上の債務保証も受けており、資金調達力は圧巻だ。このベンチャーがIPOを一旦キャンセル(Withdraw)し、一種の転換社債によって$175百万ドルを私募調達するという。引用: Solyndra nixes its IPO, but brings in $175M to keep the ball rolling
June 18, 2010 | Camille RickettsSolyndra, the maker of cylindrical solar cells that filed to go public late last December, has withdrawn that filing from the SEC, choosing instead to raise $175 million by selling convertible promissory notes to some of its existing investors. The news spells trouble for the rapidly growing company, and its thin-film solar peers.
キャンセルの理由は不明だが、先に引用した記事によると、売上が計画($300百万ドル)を大幅に下回っているとか、エネルギー省による債務保証に義務付けられた監査において、監査人が債務について懸念を示したことなどが囁かれている。また、最近IPOしたグリーンテック系企業の株価が低迷していることも延期の理由だったようだ。
...it’s still falling far short of the $300 million it had hoped to get from its public sale.
... Both biofuel maker Codexis and Chinese solar firm Jinko Solar went public in recent months, with shares selling at the low end of their price estimates.
注目のグリーンテックベンチャーと言えども、景気後退には勝てない。無理やりIPOするのではなく、機が熟すまで待つというわけだ。アメリカではIPOのキャンセル(Withdraw)は珍しくない。きちんとした数字は見てないが、IPOを申請した会社のうち、何割もの会社がWithdrawしている。柔軟と言えば柔軟だ。市場環境を見ながら、理に適わなかったら潔く撤退することが日常的に行われている。Withdrawもまた健全さの市場システムの証と見てよかろう。
TeslaとSolyndraはベンチャー企業としてはどちらも日本ではありえないぐらい大きい。如何にもアメリカ的なベンチャーのあり方であり、これがそのまま日本に馴染むかどうかはわからないが、参考にすべきところはしたいものだ。
]]>Appleは株価も熱い。先週、Appleの時価総額がMicrosoftを超えたそうだ。Yahoo Finance (US)で両社の時価総額をチェックしてみると確かにそうなっている。
(as of 5/28/2010) | |||||
VALUATION MEASURES | Apple | Microsoft | |||
Market Cap (intraday)5: | 233.74B | 226.11B | |||
Enterprise Value (May 30, 2010)3: | 210.59B | 194.92B | |||
Trailing P/E (ttm, intraday): | 21.78 | 13.37 | |||
Forward P/E (fye Sep 26, 2011)1: | 16.58 | 11.12 | |||
PEG Ratio (5 yr expected): | 1.17 | 1.47 | |||
Price/Sales (ttm): | 4.51 | 3.83 | |||
Price/Book (mrq): | 5.86 | 4.98 | |||
Enterprise Value/Revenue (ttm)3: | 4.12 | 3.27 | |||
Enterprise Value/EBITDA (ttm)3: | 13.32 | 7.72 | |||
Profitability | |||||
Profit Margin (ttm): | 21.15% | 29.03% | |||
Operating Margin (ttm): | 29.38% | 38.43% | |||
Management Effectiveness | |||||
Return on Assets (ttm): | 18.72% | 18.60% | |||
Return on Equity (ttm): | 33.97% | 41.83% | |||
Income Statement | |||||
Revenue (ttm): | 51.12B | 59.54B | |||
Qtrly Revenue Growth (yoy): | 48.60% | 6.30% | |||
Gross Profit (ttm): | 17.22B | 46.28B | |||
EBITDA (ttm): | 15.80B | 25.25B | |||
Net Income Avl to Common (ttm): | 10.81B | 17.29B | |||
Diluted EPS (ttm): | 11.8 | 1.93 | |||
Qtrly Earnings Growth (yoy): | 89.80% | 34.60% |
両社の財務内容を細かくみてみると、売上、利益では引き続きMSの方が大きいが、売上高成長率、利益成長率が圧倒的にAppleのそれが大きい。iPod, iPhone, iPadと次々にヒットを出しているAppleのこと、今後も更なる成長を織り込んだ株価ということだろう。
ちなみに、Apple、Microsoft、Googleの各社の過去5年間の株価推移をみると、Apple(青線)だけが突出して延びていることが分かる。Google(緑線)が上昇率約100%(株価2倍)、Microsoft(赤線)はほとんど上昇してない。
もう少し長い時間軸で見てみよう。
各社が上場してからどの程度株価が上昇したかをグラフにするとこうなる。
青線がApple、赤線がMS、緑がGoogleだ。Appleはすでに80年代前半から上場していたらしい(初代マッキントッシュの発売は1984年!)。MSは80年代後半だ(80年代にMS-DOSが出たばかりの頃、MSはIBMに出入りしているソフトウェア会社に過ぎなかった)。
株価の上昇カーブを見ると、各社の歴史が垣間見れる。90年代半ばにWindowsを発売して株価がどんどん上昇するMS。ピーク時の2000年には公開時に比べて約500倍まで株価が上昇した。しかし、2000年以降は時代の流れがソフトウェアからWebの方向にシフトしたこともあってか目ぼしい活躍も見えず、株価はほとんど変わらない。
Appleは90年代にWindowsに押されて株価がジリジリと低迷し、98年には危機的な状況となった(株価は公開時とほぼ同程度まで下落!)。このとき、独占禁止法の絡みでAppleの破たんを警戒したMicrosoftが、Appleに出資して支援し、Appleはこれで九死に一生を得た。その後、iPod、iPhoneなどの爆発的ヒットにより株価は急上昇中、公開時から100倍の水準まで来ている。もしMSがAppleの株式を今も持っていれば、会社の資産上昇に大きく貢献したはずだ。
Googleは2005年の株式公開以来、2008年にピークに達し、現在もその水準をキープしている。Googleの場合には上場時の時価総額が高かったので、その後の伸び代が少なかったともいえるが、Web系企業は従来のハードウェアメーカー(Apple)やソフトウェアメーカー(MS)に比べて会社の成長時間が短いのかもしれない。
世間はまだリーマンショックから完全に回復しておらず、ギリシャに伴う新たな金融の混乱や政治の混乱など、閉塞感でいっぱいだ。そんな中のAppleの力強さは目を見張るものがある。
どうしたらこの力強さを日本で実現できるのか、そんなことを考えてみたいものだ。
]]>KPCBのJohn Doerrが「iPadは世界を支配する」と言ったそうだ。少々引用させてもらおう。
引用: Kleiner Perkins’ John Doerr: iPad ‘will rule the world’
... Kleiner partner John Doerr sounded especially excited about the device, claiming that it will “rule the world.”
“I hope I can sleep with it Saturday night,” Doerr said. “It feels gorgeous. It is not a big iPod. It is a very big deal.”The iPad will spur a “third renaissance in software,” he added. It’s a completely different kind of interaction, with interactions moving from WYSIWYG interfaces, where “what you see is what you get,” to WYTIWis, where “What you think is what is” ? he didn’t offer too many details about the difference, but the idea is that the iPad is even more intuitive than previous interfaces.
John Doerrによると、iPadは「第三のルネッサンス」であり、WYSIWYGの世界からWYTIWisの世界、つまり「ディスプレイで見たとおりに処理される」世界から、「直感的に思ったことがそのまま処理される」とでもいうべき世界を提供するツールだとしている。マニュアルに頼らず、直感的にしたいと思ったことがそのまま実現されることがiPadの本質だという意味だろう。単なる電子書籍にとどまらず、ITのあらゆる場面で使える普遍的なデバイスになりうる、というようなことだろうか。
日本では著作物の権利関係の調整が手間取っているようでiPadが普及するかどうか微妙なところだという。旧態依然とした権利関係を引きずったままでは世界からますます取り残されかねない。産業構造、社会構造そのものを変えていくような新たな動きを起こしていきたいものだ。
]]>こうした大きなカンファレンスだっただけに海外からの来場者も多かった。会場のあちこちで欧米系、アジア系の人を見かけた。いい傾向だ。
そんな中、主催者が来場の主だった人を招待して「VIPランチパーティ」なるものを開催してくれた。日本の環境系の人が集まる交流会というのは初めてだったので、期待して行ってみた。しかし結果は悪い意味で驚きだった。300人ほどの業界関係者が集まる立食パーティだったが、大半の人が会場内でただ黙々と食事をしているのである。食事を取りに行くための行列も長く、みんなおとなしくその行列に並んでいる。300人もいるのに、とても静かなのだ。名刺交換なんて雰囲気じゃない。みんなあまりしゃべっていない。。。。海外からの人たちもこれには呆然という感じで立ちすくしていた。
日本でIT系の集まりに参加しても食事に一生懸命な人は見かけるものだが、もう少し交流会の側面があることが多い。業種が違うと雰囲気が違うということか。。。
日本の環境系技術は高いというが、コミュニケーションの方法には非常に戸惑いを感じる。下記のような記事もあるが、ぜひとも積極的にコミュニケーション&情報発信していかねばなるまい。
引用: クリーンテックに流れ込むカネと「ジャパン・パッシング」
日本企業は米国では存在感が薄い。それどころか、クリーンテック分野で「日本外し」が始まったと感じている人は少なくない。理由は大きく分けて2つある。1つは海外での競争力が弱いことだ。民間の分野では日本企業のアピールが非常に弱い。外交も及び腰であると感じる。
今週末はAcademy Awardsが開催される。毎回注目される作品が多い中で、興行収入という点ではAvatarが圧巻だが、Oscarの行方に注目したい。
Avatarは未だに上映が続いている人気の3D映画だが、アメリカではAvatarに続く3D映画であるAlice in wonderlandがこの週末に公開され、出足は好調なようだ。
Box office: 'Alice in Wonderland' on track to break all March records
... The Tim Burton-Johnny Depp collaboration debuted Friday to close to $40 million, putting its 3-day cume in the range of $110-$120 million. That far surpasses the previous March record-holder, Warner Bros.’ 300 which opened to $71 million back in 2007.
先週の金曜日に封切られたばかりのようだが、1日の興行収入が$40M、土日を含めた3日間では$110-120Mに達する見込みで、3月公開の映画としては記録的だという。3D映画だから人気なのか、Johnny Deppだから人気なのか、おそらくその両方だろうが、3D化の流れはすっかり定着しそうな印象を受ける。
この映画は日本では4月中旬の公開のようだ。もし見に行かれる方があれば下記に注目しよう。
If you go, watch the tea party scene closely. As reported on VentureBeat, it was filmed with standard 2D cameras and then converted to 3D by SoCal digital post-production house Legend 3D.
映画の中に出てくるティーパーティのシーンを注意深く見てみよう。2次元の映像を3次元化したものらしい。Legend 3Dのデジタル処理によるものとか。
今年はテレビも3D元年と言われている。3Dブームはしばらくは続きそうだ。
]]>アメリカではVC業界発展の背景に、エリサ法(ERISA : Employee Retirement Income Security Act 1974、従業員退職年金保障法)の果たした役割が大きいといわれる。たとえば下記のページから引用しよう。
引用: VCF出資者としての年金基金
米国のベンチャーキャピタル投資の発展史を眺めてみると、1981年にERISA(従業員退職年金保障法)による年金基金の運用規制緩和で、年金基金のベンチャーキャピタル・ファンド(VCF)への投資が解禁されたことの意味は大きい。ERISAの規制緩和は、当時のキャピタルゲイン課税の引下げやPCなど新しい技術革新の進展と相俟って、1980年代以降の米国VCFの規模拡大に貢献し、結果としてVC投資の意義への社会的認識も大いに進んだ。同時に、その後の米国VCFの主たる出資者は年金基金となり、最近でも米国VCFの約半分は年金基金が出資している。
エリサ法については日本では語られることはほとんどないが、年金基金が危機に瀕していた80年代のアメリカにおいてエリサ法が出来たのは興味深い。その背景や意義を理解することは重要だ。私自身、きちんと研究しているわけではないが、VCとしての視点では下記のような影響があったと聞いたことがある。
日本の国民年金、厚生年金も危機的状況だと聞いているが、金利の低い日本の国債やぱっとしない上場株式で運用していてもたかが知れている。思い切って年基金の一部(たとえ1%でも十分!)をベンチャー投資に回すような法律などできないものだろうか。
もちろん、今の日本の業界体制では不安だ。起業家、支援者、情報開示の在り方、失敗した場合の在り方など、あらゆるところでレベルアップが求められよう。しかし、明日の日本を担うベンチャーが本当に出てくるとしたら魅力的だ。
日本の閉塞感を打破するため、みんなで世論を盛り上げませんか?
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