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[コラム] 電力買取制度って「正しい政策」か? [コラム]

最近、某首相から「脱原発」という言葉が飛び出した。放射能汚染の危険がある原発よりも、クリーンな再生可能エネルギーにシフトしようということのようで、発想としてわからなくもない。


グリーンテックビジネスに興味のある小職としては、グリーンビジネスが盛り上がりそうな話はどちらかと言えば歓迎であり、「脱原発」も否定はしない。しかし、「脱原発」を進める上で重要な「電力買取制度」の中身があまり検証されてないようで気になる。これをきちんと議論しないで話を進めるのは危険だと考えている。


太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、たいていコストが高い。一般家庭向けの現行の電気料金の価格は概ね20円台/KWhくらいなのだが、例えば太陽光発電のコストはこれよりもかなり高い(下記参照、ちょっと古いけど)。


引用: 太陽光発電のコスト

(省略) 。。。平成17年度における設備容量1kWあたりの平均価格(税抜68.4万円/kW:参考データ参照)を用いて、償却年数20年で計算した場合、利子や保守費用まで含めた太陽光発電量あたりのコストは47~63円/kWh程度と算出される。


今後、太陽電池等の再生可能エネルギーのコストが下がって、将来的には現行の電力価格と同程度になるという可能性はあるのだろうが、それがいつになるかはまだ見えない。再生可能エネルギー由来の電気の価格が一般の電気料金よりも高いうちは、これを促進させるためには「電力買取制度」が重要となってくる。例えば、太陽光パネルを設置した人は、設置から10年間ぐらい、電力会社に対して余剰電力を42円/kWhで販売できる、というような制度だ。


引用: 買取制度ポータルサイト
資源エネルギー庁 再生可能エネルギー推進室

太陽光発電の余剰電力買取制度平成23年度の買取価格が住宅用(10kW未満)42円/kWh等、住宅用(10kW以上)及び非住宅用40円/kWh等に決まりました。 


(同サイトから引用)


太陽光パネルを設置した人は、上記のような電力の販売によって収入を得ることが出来るので、太陽光パネルの設置コストの負担を軽減することが出来る。こうしたインセンティブを出すことによって、太陽光パネルなど再生可能エネルギーを政策的に促進しようという訳だ。


これはこれでよく出来た政策だと思う。ただ、この政策によって「得をする人」と「損をする人」が出てくることが問題だ。


「得をする人」は、自宅の屋根に太陽光パネルなどの再生可能エネルギーの設備を設置して電力を売った人、そうした再生可能エネルギーの関連業者(太陽電池メーカーや施工業者)などだ。太陽電池や風力発電を大規模に行う事業者にも買取制度が適用されるとした、そうした事業者も得をする部類に属することになるだろう。(例えば○○○バンク)


一方、「損をする人」は買取制度によって上乗せされた電気料金を払わなければならない人だ。


買取制度による電気料金への上乗せ分は、例えば下記のように、標準家庭で月10~100円程度と試算されている。月10~100円ぐらいというのは、高いのだろうか、安いのだろうか。。。


引用: 太陽光サーチャージ(太陽光発電促進付加金)
標準家庭の月額負担は10~100円

一般電気事業者が太陽光発電の余剰電力の買取りを行う費用は、「太陽光発電促進付加金(仮称「太陽光サーチャージ」)」として、電気料金に上乗せし、すべての電気利用者が公平に負担する。太陽光サーチャージの季節変動を抑えることや自由化部門の契約期間が通常1年であること等を考慮し、前年度の買取総額を次年度に回収するスキームとする。

買取制度は平成21年11月からスタートするため、その費用を回収する太陽光サーチャージは、平成22年度当初より導入される。導入当初の負担額は、試算の結果0.1円/kWhとなり、標準家庭での負担額は月10~100円程度になる見込み。太陽光発電システムの設置者の増加に伴い買取総額も増えるため、年度を追うごとに一般家庭をはじめとする電力需要家の負担額も増えていく。


仮に、標準家庭の費用負担がざっくりと月100円、年1千円になったとした場合、買取制度で使われる10年間をかけると、1家庭当たり10年間で「1万円」を負担している勘定だ。これって本当に「安い」のだろうか?


そもそも、この「月10~100円」という試算は果たしてどのような前提で出てきたものが疑問だ。


きちんとした裏付けを取れていないのだが、電力買取制度が先行しているドイツでは、この制度によって電気料金が「2割程度」高くなったという説がある。電力買取制度によって、太陽光パネルの設置が進み、太陽電池メーカーや関連業界は大いに潤ったのだが、その代償として太陽光パネルとは何ら関係のない一般庶民の電気料金が2割上がったという。予定よりも多くの電力を買い取ることになってしまったからなのか、そのあたりの背景は不詳なのだが、事例としてよくよく研究する必要はありそうだ。


電力買取制度によって太陽光などの再生可能エネルギーが普及し、それによって全国民の電力料金が下がり、全国民がその恩恵を受けられるのであれば、電力買取制度は「正しい政策」と言えるだろう。


しかし、再生可能エネルギーを普及させても電力料金が下がらず、再生可能エネルギーに携わる人だけが潤い、そうでない人がコストを負担するだけで終わるのだとしたら、果たしてこれは「正しい政策」と言えるだろうか。


再生可能エネルギー政策は前向きに進めるべきだと思うが、電力買取制度によって国民が負担すべきコストの試算は重要だ。内容を分かりやすく国民に開示した上で、大いに議論すべき重要課題だろう。


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