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シリコンバレーの世代交代 [VC業界動向]

さてさて、すっかりご無沙汰してしまいました。


「もうブログは止めちゃったんですか」的な問い合わせも頂きつつ、ありがたいことだと思いながらも、何となく気乗りしないでおりました。


「シリコンバレーから元気のいい話題をご提供」と思いながら「シリコンバレーの日々」を始めて早いもので7年目、業界の風景もあれこれと変わってしまったものです。投資家という立場から見るその風景は、幾多の流行り廃りがあり、プレーヤーの交代があり、成功した人もそうでない人もいて、何となく「諸行無常だなぁ」ってなことを思ったりしていたわけです。


ことに、個人的に自然エネルギー系に注目していたのですが、自然エネルギーのような大規模な資金調達を要する事業は総じてやや苦戦気味。太陽電池関係などはその筆頭で、この1年で多くのベンチャーが破綻していきました。SolyndraやらUniSolarといった著名どころだけでなく、比較的注目度の高かった下記の2社の破綻も伝わってきました。各社とも巨額の資金を投じてきただけに残念です。


Konarka :  Thin-Film Solar Panel Maker Konarka Files For Bankruptcy

Abound Solar : Solar Firm Seeks Bankruptcy Protection


でも、元気の出る話もあれこれ出てきましたね。


最近の大きな流れと言えば、何といってもAccelaratorの方々の台頭でしょう。多くの著名なプレーヤーが出てきており、日本でも同じような業態が流行ってます。中でもAndreesen Horowitzさんあたりは惚れぼれしますね。理念がすばらしい上、$1.5Bという巨額のファンドまでお持ちです。シードから投資するファンドでこの規模は破格でしょう。これだけ大規模な金額を運用しきれるか? という疑問は残りますが(このあたりの疑問に対する回答はこちら)、信念を貫いて突っ走れるところは何と言っても頼りがいがある。今後、どこまで成長されるか、ますます注目です。


Facebookの上場の余韻がまだ残るシリコンバレー、引き続きソーシャルが重要な分野であることには変わりはないのですが、ソーシャルも、ソーシャル以外も、これからどこに向かっていくか、引き続き追いかけていきたいものです。


また折に触れてアップしていきたいと思います。


GoogleがZagatを買収 [IPO/M&A/資金調達]

Zagat 世界的なレストランガイドと言えば、フランスのミシュラン・ガイドが有名だが、アメリカ人にはZagat Surveyが人気だ。レストランの評価は「星」ではなく、「数字」でレーティング。料理、内装、サービスを30点満点で評価したもので、ワインレッドの縦長な装丁が特徴的。アメリカ人に、「サンフランシスコでお勧めの店はどこだ」と聞けば、「Zagatで探せ」と応えが返ってくる、定評のあるガイドブックだ。


そのZagatがGoogleに買収された。今後、GoogleのSearchやMapにZagatのガイド情報が表示されるという。買収額などは公表されていない。


引用: Google acquires Zagat, strikes a major blow against Yelp

September 8, 2011 | Sean Ludwig

Google has bought  Zagat, the popular restaurant reviews service. The search giant announced the news on its company blog today and said users will immediately start seeing Zagat’s content integrated in Google searches and Google Maps.
Terms of the acquisition were not disclosed. 


位置情報がらみのサービスはネット業界でも引き続き注目の成長コンテンツだが、レストランはそうした位置情報の中でも最重要だろう。Zagatのレストラン情報がGoogle Mapに出てくるとなればユーザとしても興味深い。


Zagatは創業以来32年立つそうだ。ミシュランとは違って、Zagatの評価は一般の人へのアンケートの回答により統計処理したものだという。ある意味でUser Generatedなコンテンツなのだが、書く人によってばらつきの出る「コメント」ではなく、評価を数値化していることが特徴だ。食べログも「星」を載せているが、これをもうちょっと高い精度でやっている、ということか。


アメリカでよく似たサービスにYelpがある。レストラン情報サイトとしてはこちらの方が有名で、利用者があれこれ口コミ情報を載せていく方式になっており、日本の食べログと同じだ。GoogleはこのYelpを2009年に$550M(!)で買収しようとしたが成立しなかった。で、Googleは諦めきれずに今回のZagatの買収になった、ということか。Zagatの通知化された評価というのは確かに強力だ。Yelpにとっては脅威になるかも知れない。


ネットの世界で巨大なプラットフォームを構築した企業は、世の中の各種コンテンツを次々に統合していく、、、紙媒体しかなかった創業32年の老舗企業がその対象になり始めたという意味では驚きだ。Google、Facebookなどを中核に、今後もこうした「ネットでない会社のネットへの統合」が普遍的に起こるのだろう。日本のDeNAやGreeがこれにどこまで対抗していくか、動向を注視したい。


ところで、日本人である私としては、Zagatもいいのだが、Surveyに写真が一つも出てこないのはいつも取っつきにくいなぁと感じている。お願いだからレストランのメニューやサイトにもっと料理の写真を掲載してくれ、と言いたいのだが、これは文化の問題か。。。


誰か、アメリカのレストランのメニューに写真を載せるサービス、始めてみませんか? ウケると思うんだけどなぁ。。。 もっとも、アメリカのレストランでは、ステーキといえばステーキであって、誤解のしようもない。写真を見ても見なくてもあまり変わらないか。。。


[コラム] 電力買取制度って「正しい政策」か? [コラム]

最近、某首相から「脱原発」という言葉が飛び出した。放射能汚染の危険がある原発よりも、クリーンな再生可能エネルギーにシフトしようということのようで、発想としてわからなくもない。


グリーンテックビジネスに興味のある小職としては、グリーンビジネスが盛り上がりそうな話はどちらかと言えば歓迎であり、「脱原発」も否定はしない。しかし、「脱原発」を進める上で重要な「電力買取制度」の中身があまり検証されてないようで気になる。これをきちんと議論しないで話を進めるのは危険だと考えている。


太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、たいていコストが高い。一般家庭向けの現行の電気料金の価格は概ね20円台/KWhくらいなのだが、例えば太陽光発電のコストはこれよりもかなり高い(下記参照、ちょっと古いけど)。


引用: 太陽光発電のコスト

(省略) 。。。平成17年度における設備容量1kWあたりの平均価格(税抜68.4万円/kW:参考データ参照)を用いて、償却年数20年で計算した場合、利子や保守費用まで含めた太陽光発電量あたりのコストは47~63円/kWh程度と算出される。


今後、太陽電池等の再生可能エネルギーのコストが下がって、将来的には現行の電力価格と同程度になるという可能性はあるのだろうが、それがいつになるかはまだ見えない。再生可能エネルギー由来の電気の価格が一般の電気料金よりも高いうちは、これを促進させるためには「電力買取制度」が重要となってくる。例えば、太陽光パネルを設置した人は、設置から10年間ぐらい、電力会社に対して余剰電力を42円/kWhで販売できる、というような制度だ。


引用: 買取制度ポータルサイト
資源エネルギー庁 再生可能エネルギー推進室

太陽光発電の余剰電力買取制度平成23年度の買取価格が住宅用(10kW未満)42円/kWh等、住宅用(10kW以上)及び非住宅用40円/kWh等に決まりました。 


(同サイトから引用)


太陽光パネルを設置した人は、上記のような電力の販売によって収入を得ることが出来るので、太陽光パネルの設置コストの負担を軽減することが出来る。こうしたインセンティブを出すことによって、太陽光パネルなど再生可能エネルギーを政策的に促進しようという訳だ。


これはこれでよく出来た政策だと思う。ただ、この政策によって「得をする人」と「損をする人」が出てくることが問題だ。


「得をする人」は、自宅の屋根に太陽光パネルなどの再生可能エネルギーの設備を設置して電力を売った人、そうした再生可能エネルギーの関連業者(太陽電池メーカーや施工業者)などだ。太陽電池や風力発電を大規模に行う事業者にも買取制度が適用されるとした、そうした事業者も得をする部類に属することになるだろう。(例えば○○○バンク)


一方、「損をする人」は買取制度によって上乗せされた電気料金を払わなければならない人だ。


買取制度による電気料金への上乗せ分は、例えば下記のように、標準家庭で月10~100円程度と試算されている。月10~100円ぐらいというのは、高いのだろうか、安いのだろうか。。。


引用: 太陽光サーチャージ(太陽光発電促進付加金)
標準家庭の月額負担は10~100円

一般電気事業者が太陽光発電の余剰電力の買取りを行う費用は、「太陽光発電促進付加金(仮称「太陽光サーチャージ」)」として、電気料金に上乗せし、すべての電気利用者が公平に負担する。太陽光サーチャージの季節変動を抑えることや自由化部門の契約期間が通常1年であること等を考慮し、前年度の買取総額を次年度に回収するスキームとする。

買取制度は平成21年11月からスタートするため、その費用を回収する太陽光サーチャージは、平成22年度当初より導入される。導入当初の負担額は、試算の結果0.1円/kWhとなり、標準家庭での負担額は月10~100円程度になる見込み。太陽光発電システムの設置者の増加に伴い買取総額も増えるため、年度を追うごとに一般家庭をはじめとする電力需要家の負担額も増えていく。


仮に、標準家庭の費用負担がざっくりと月100円、年1千円になったとした場合、買取制度で使われる10年間をかけると、1家庭当たり10年間で「1万円」を負担している勘定だ。これって本当に「安い」のだろうか?


そもそも、この「月10~100円」という試算は果たしてどのような前提で出てきたものが疑問だ。


きちんとした裏付けを取れていないのだが、電力買取制度が先行しているドイツでは、この制度によって電気料金が「2割程度」高くなったという説がある。電力買取制度によって、太陽光パネルの設置が進み、太陽電池メーカーや関連業界は大いに潤ったのだが、その代償として太陽光パネルとは何ら関係のない一般庶民の電気料金が2割上がったという。予定よりも多くの電力を買い取ることになってしまったからなのか、そのあたりの背景は不詳なのだが、事例としてよくよく研究する必要はありそうだ。


電力買取制度によって太陽光などの再生可能エネルギーが普及し、それによって全国民の電力料金が下がり、全国民がその恩恵を受けられるのであれば、電力買取制度は「正しい政策」と言えるだろう。


しかし、再生可能エネルギーを普及させても電力料金が下がらず、再生可能エネルギーに携わる人だけが潤い、そうでない人がコストを負担するだけで終わるのだとしたら、果たしてこれは「正しい政策」と言えるだろうか。


再生可能エネルギー政策は前向きに進めるべきだと思うが、電力買取制度によって国民が負担すべきコストの試算は重要だ。内容を分かりやすく国民に開示した上で、大いに議論すべき重要課題だろう。


[書籍紹介] 日本の未来について話そう [書評]

元気になる本に出会ったので紹介したい。


「日本の未来について話そう - 日本再生への提言」とする本で、マッキンゼーが監修し、日本・世界の著名人65人が日本の未来について語ったものだ。


内容はとても深い。日本をよく知る65名が、様々な角度から日本人の民族性、人生観、歴史に触れ、日本人とは何か、日本が成功してきた経緯、バブルとその後の失われた20年、さらに東日本大震災という未曽有の危機を受けて、日本人はこれからどうすべきか、日本はこれからどこに向かうべきかについて提案している。


全体を通じて一貫しているのは、「日本人への熱きエール」だ。日本の将来について、次々と前向きな発言が繰り出される。65名もの方々の提言をまとめただけに全体の文字数は多いが、是非とも一文一文を丁寧に噛みしめながら読んでみたい。読破するには時間がかかるが、その価値がある本だ。


個人的にはマサチューセッツ工科大学名誉教授のJohn W. Dower氏の文章は開眼の思いだった。


読み進めるうちに元気が出てくる。また、何かをしなければならないという気分になることだろう。


この本を題材に、あちこちで議論が盛り上がることを期待したい。


「なでしこジャパン」のように、改めて日本を元気にしよう!



CarlyleがIPO? ファンドのIPOってどう? [コラム]

米Carlyle Groupが年内のIPOを目指しているらしい。


Carlyleは世界有数のPEファンドで、資産規模は1,000億ドルを超える(約8兆円!)。日本でもバイアウト分野を中心に多くの実績を積んでいる超有名ファンドだ。そんなCarlyleがIPOを目指しているという。


引用: Carlyle Aims for IPO to Boost Buyout-Fund Capital, Conway Says
By Cristina Alesci - Dec 7, 2010 12:55 AM GMT+0900 

William Conway, the deal maker who helped build Carlyle Group into the world’s second-biggest private-equity firm, said the company is gearing up for a public share sale to amass permanent capital and contend with the growing challenge of raising money for buyout funds.


PEファンドの上場は珍しいことではないようで、Blackstone GroupやKohlberg Kravis Roberts & Co.といった大手ファンドも株式市場に上場している。とはいうものの、資金を数年単位で運用するPEファンドが、新たな資金を株式市場から調達するというのはどうも違和感がある。


Carlyleのような世界有数の資産を持つファンドが、IPOでいったい何を狙っているのか。


引用: Carlyle to raise $1bn in weak IPO market
By Henny Sender in New York

Carlyle, the private equity firm with $108bn under management, plans to raise more than $1bn with a initial public offering of stock but is likely to come to the market with a lower-than-expected valuation, according to bankers familiar with the matter.


FTの記事によると、CarlyleはIPOによって10億ドルの資金調達を狙っているとのこと。この記事を見る限り、資金調達目的のIPOのようだ。私の勝手な想像では、儲かっている大手PEファンドは「投資家、門前に列をなす」ような状況で、いろいろと大変な公募などしなくとも、私募でいくらでも資金が集まるようなイメージを持っていた。しかし、そうした簡易な私募ではなく、公募によって資金を調達したいらしい。


PEファンドが上場することで、公募による資金を調達して新たな投資を行うことで企業価値を高める、という成長シナリオはありえるのだろう。しかし、株式上場後に株主となる人の中には、短期的な株価上昇を狙っている人もいるはずだ。そうした短期思考の投資家から、即効性のある株価上昇策を求められ、ファンド運用が長期思考から転じて短期思考に陥る懸念はないのだろうか。


日本でもしばしば公開企業による「株式の非公開化」が目につくが、そんな際に必ずと言っていいほど登場するのがPEファンドだ。公開会社が、PEファンドの資金によって短期思考の投資家の圧力から解き放たれ、長期的視点に立って更なる成長を目指す、というのが株式非公開化の重要な目的だ。つまり、PEファンド(バイアウトファンド等)は、株式市場よりも長期的な視点に立つことに存在価値があった。そうした、PEファンドが自ら上場して株価変動の波にさらされるとしたら、果たしてPEファンドはこれまでどおり長期的視点に立てるのだろうか?


PEファンドが公募によって資金を調達する際には、こうした短期思考化が懸念されるわけだが、それでも公募に頼らざるを得ないのだとしたら、その理由は何であろうか。


PEファンドを取り巻くマネーの状況が変調してきた、ということだとすると、根が深い。


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