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技術系ベンチャーが陥るワナ [ベンチャービジネス]

今日は半導体系ベンチャー企業の経営陣と話をした。
研究者肌のまじめな方で、最近研究所から独立し、今回が始めての投資ラウンドだという。一生懸命説明してくれるのはいいんだが、懲りすぎてしまう傾向があって話がなかなか進んでいかない。昼下がりのミーティングで、難しい話になるとどうも眠たくなるせいもあって、懸命にこらえているうちに、全然違うことを考えていた。

「この社長は、これから起こるであろう数々の苦難を乗り越えていけるんだろうか?」

いろいろな企業を見てきたが、特に技術系ベンチャーには技術系ゆえの潜在的な問題にぶつかることが多いと思う。

ケース1:技術開発の遅れ
技術開発プロジェクトに関わったことがある人なら「そんなこと、あたり前」って思うでしょう。そうなんです、これって企業の大小を問わず、技術開発プロジェクトではよく起こることで、「最新の技術だからバグを直すのに手間取った」とか「新しく雇ったエンジニアが経験不足でて立ち上がりに時間がかかった」とか「製品供給元が直してくれない」とかいう話になることが多いんです。(これを軽減するには「プロジェクト管理」が必要でしょうが、これはこれで話が長いので今日は置いときます)。
大企業での技術開発の場合には多少つまずいても路頭に迷うことはないでしょう。でもベンチャー企業の限られた資金量では大問題。事業縮小に陥ったり、事業転換したり、最悪、会社をたたむことだって起きてしまうんです。

ケース2:品質基準の甘さ
一般に、製品を作る側が供給できる品質レベルとユーザーが求める品質レベルにはギャップがあるものです。作る側が「このくらいの完成度なら売れるだろう」と思っても、買う側には「とれもじゃないがそんな紛い物は買えない」となってしまいます。
特にベンチャー企業と大企業の間で特にこのギャップが大きく、さらに海外のベンチャー企業と日本の大企業の間ではそれこそ天と地ほども意識がかけ離れていることがある。このギャップを埋めるためにどれほどの人材と資金を投じなければならないことか。。。

ケース3:交渉力の弱さ
ベンチャー企業はなかなかユーザーに対して強いことが言えない。有効な打ち手がないと価格、納期で我慢を強いられ、貧乏暇なし状態に陥ってしまう。ひどい話になると大企業の言いなりになっていいように使いまわされて、何も仕事をもらえないままビジネスが立ち消えてしまうことも良くある。

ケース4:そもそも市場がない、市場を作れない
素人から見てもあまり売れそうにないものを一生懸命作った挙句、やっぱり売れずに窮してしまうパターン。ベンチャーですから人と違うことをやって初めて大きな成功があるわけですが、そうかといって売れないものを作ってもしょうがない。このあたりは経営センスというか、市場の動きを読むか、市場を自分で作り出すぐらいの感受性と実行力が求められてくるところ。

先の社長の話を聞いているうちに思いました。
「この会社に投資したとして、この社長が上記をクリアできなかったらどうする?」

あなたならどうする?


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コメント 4

kitakaze

>はじめまして。私は肉体労働サラリーマンです。
このベンチャー会社へのの投資、私だったら要求額の20%を投資します。ただし今回投資するだけで以後連絡もとりません。
和と美の日本人的感覚だと、こんな会社も存在しないと他の本物になりうるベンチャーも存在できなくなってしまうかもしれないので。
質実剛健主義と言ってらっしゃるUSA気質なら『NO』でしょうか?。それとももっと大きな目でみて理由を考えて出資に踏み切るでしょうか。
by kitakaze (2005-09-14 23:01) 

キャピタリストの日記

kitakazeさん、コメントありがとうございます。
このケースでは、少なくともより強力なCEOが必要だろうとは思います。
でも、優れたCEOであってここに書いたようなことが普遍的に起こる気がしてまして、それが起きたときにどう対応していくか、その対応力が経営陣にも投資家にも求められるものです。投資家として「対応できる」と確信できれば投資するでしょうし、「対応しきれない」と見れば投資しないことになるのでしょう。
明確な答えはないですが、私自身はそんな目で毎日対応しており、投資家としての判断力を日々鍛えているところです。
by キャピタリストの日記 (2005-09-15 05:10) 

kitakaze

>>回答ありがとうございます。お仕事内容の事だったのに私の邪推なコメントでは不適切だったかもしれません。どうかお許しください。
ただし、こんな私もじつは一晩中正しい解答はなんだろうと考え続けていました。きっとこの場合は『NO』です。単純に信頼関係には発展しそうも無く、また別の日に書き込まれていらっしゃるように、所有者なのか経営者なのかの線を引きづらくなる事例に当てはまるように思えたからです。
一晩考えたドラマのシナリオがあります。今回同席した先方側には、このミーティングを冷静に見据えている人がいたとして…、思い切って手の内を明かし、列挙されている判断基準をミーティングで先方に伝えます。やがて今回の企業は失敗でも、先方側の同席していた別の方が新しいベンチャーを立ち上げて頼って投資を求めてくる。この方こそ本物だった…。ただし、本物ではなく事情通になり下がったペテン師になってくるかもしれないですけどね。どうしてもお金の視点ではなく、ベンチャーをより盛んにしようとする役割にまわろうとするお人よしの日本人で終わりたいと思います。
勝手ながらRSSに登録させていただきました。一人の読者として私の知らない世界に連れて行っていただけるのではないかと。働きアリの私は自分の巣穴しか知りません。たくさんのお考えを聞かせていただけると思いました。時差マイナス17時間(JST)ですかね。本日はありがとうございました。
by kitakaze (2005-09-15 19:26) 

キャピタリストの日記

kitakazeさん、どうもありがとうございます。
不適切だなんてこはまったくありませんよ、これからもどんどんコメント頂けると励みになります。また、いろいろと思案して頂いて嬉しいです。私もほぼ毎日これらの問題を考えてます。
「お人よしの日本人」という感覚はとてもよくわかります。私も投資するのはお金だけが目的ではなく、目の前のベンチャー企業を支援して、世の中に一石投じてもらいたいという夢みたいな思いがあるからです。
投資家は他力本願ではだめで、投資したら主体的にベンチャー企業をフォローしていけるようになるべきだと考えています。あまり詳しくは書けませんがそのあたりを説明したくてこの日記を書きました。今後ともご注目頂ければ幸いです。
by キャピタリストの日記 (2005-09-16 23:44) 

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