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広告業界の行方 [その他テクノロジー]

Web技術の進化によりオンライン広告の精度が高まっているのは誰も異論は無いだろう。そして、広告の全メディアに占めるオンラインの割合が高まって行くのも容易の想像が出来る。



Economist誌によると、全世界の広告業界の規模は4,280億ドル(約50兆円)だそうだが、実にこのうちの約半分に当たる2,220億ドルの広告が効果の無い人に対してなされたり誰にも届かなかったりで無駄に消えているという。原文を引用して見よう。

Wanamaker's wasted half is not entirely proverbial. The worldwide advertising industry is likely to be worth $428 billion in revenues this year, according to ZenithOptimedia, a market-research firm. Greg Stuart, the author of a forthcoming book on the industry and the boss of the Interactive Advertising Bureau, a trade association, estimates that advertisers waste—that is, they send messages that reach the wrong audience or none at all—$112 billion a year in America and $220 billion worldwide, or just over half of their total spending. Wanamaker was remarkably accurate.

テレビ広告を例にとって見ると、30秒の広告のコストを人口千人あたり$20ドル(CPM)として、百万人の都市で放映する場合を想定すると、広告料金が$20,000ドルとなる。ところが、テレビで広告が始まると多くの人はチャンネルと変えるとかトイレに立つとかして広告を見ているとは限らない。アメリカで流行っているTiVoは映像をハードディスクに蓄えるのでユーザーは通常コマーシャルをスキップしてしまう(これは日本のハードディスクビデオレコーダーでも起きていることだ)。こうして、テレビ広告の多くは無駄に消えているとしている。



一方オンライン広告はこうした無駄を省いてくれる。サーチエンジンで特定のキーワードを検索した人にそのキーワードに関連した広告を載せるので、明らかに広告のヒット率が高くなる。Economistの同記事によると、オンライン広告の平均的なCPMは$500ドルだそうで、テレビ広告の実に25倍の価値があると言う。

The average cost to an advertiser from one such combination is 50 cents, which corresponds to a CPM of $500; by contrast, the average CPM in traditional (“exposure”) media is $20. A consumer's action, in other words, is 25 times as valuable as his exposure.

そうしたオンライン広告の代表格であるGoogleのAdWordsとAdSenseは昨年61億ドル(約7000億円)を売り上げたようだ。広告業界全体に占める比率はまだ微々たるものだが、単独の企業が広告だけでこれだけの売上を上げるのは驚きだ。



また、インターネットは「口コミマーケティング」という新しい分野も切り開いた。価格.comのように本当に口コミをやっているところもあるし、コミュニティを作って特定の趣味・興味・属性を持つ集団を作り上げ、そうした特定のセグメント相手にマーケティングしようという類のビジネスがご存知のように山ほど存在する。



いずれネットの世界がどんどんテレビと融合するようになると、テレビ業界を支えている広告業界がネットに対応しなければならないのは自明だろう。問題はそのときに広告業界の構造や市場規模がどうなるかだ。日本で言えば広告代理店を頂点としてテレビ局や各種制作会社が業界を形成してきたが、これら企業はネットへの対応を迫られることだろうし、ライブドア対日本テレビや楽天対TBSの例を見ながら既に手を考えているはずだ。
市場規模についてはオンライン広告によって広告業界から無駄がなくなることで、全体のパイが縮小する可能性がある。たぶん広告関係者やテレビ関係者にとってもっとも頭の痛い問題はこれではないか。もっとも、これまで無視していたロングテールの規模がそれなりに大きそうなので、たとえマス相手の広告市場が小さくなったとしてもロングテール向けの市場規模が拡大することでカバーされると言う考え方もある。いずれの場合にも広告業界には大きな変化であることは間違いないようだ。


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