クラウド・コンピューティングに望むこと by IDC [ソフトウェア]
未曾有の不景気の時代にありながら、クラウド・コンピューティングには引き続き熱い視線が注がれているようだ。しかし、本当の発展はまだまだこれからといったところかも知れない。
去る4月7日、IDCのFrank Gens氏がエネルギー業界のIT担当役員らを対象としたカンファレンスでクラウド・コンピューティングについて語った。
引用: Energy Industry IT Execs Share Cloud Wish List
Posted by Frank Gens on April 7th, 2009... The interest in cloud computing by these Energy industry IT leaders was strong.
... they offer some interesting insights to the IT industry about how users are thinking about cloud computing right now, and what vendors should be focusing on to position for success in this industry transition:
Gens氏によると、エネルギー業界のIT担当役員らはクラウドコンピューティングに対して強い興味を持っており、彼らがクラウドコンピューティングについてどのように考えているか、あるいは今後何をして欲しいと考えているかについて、示唆に富むコメントが寄せられたとしており、その一端が紹介されている。詳細は原文を見ていただくとして、以下に要約と、私のコメントを付記させて頂く。
- Integrating Cloud and on-premise IT
クラウドを既存の情報システムとどのように統合するか。聴衆の興味を惹いたのは"Bridging"というコンセプトのようだ。
Bridgingの詳細は不明だが、機能を単純化してクラウド上におき、ユーザには必要に応じてこれらを組み合わせ、相互に接続[=Bridge]してサービスを提供するようなアーキテクチャだと思われる。 - Vendor lock-in and cloud interoperability
システム担当役員らはクラウドのベンダーによるロックイン(囲い込み)が心配。標準化され、オープンで、ベンダー間の相互接続が容易な環境を望んでいる。
たとえば、Salesforceを基幹システムとして使う顧客企業が、Salesforce内の情報を他をシステムとも連携させたり、Salesforceから他のベンダーにスイッチできるようにしたい、ということだろう。 - Credible cost comperisons
クラウドコンピューティングと従来型のIT形態とのコスト比較(開発、運用などを含めたトータルなコスト)を望む顧客が多い。
確かに、どちらが安いのか、業界としてのコンセンサスはまだ固まっていない。 - User Experience
クラウドは果たして使いやすいのか。従来型のIT環境からクラウドにうまく移行できた例があるものか(それも大企業において)、興味を持つ顧客が多い。 - Accommodating more "customization" in the cloud
顧客によってはクラウド上の機能をカスタマイズして拡張したい人もいるらしい。特に大企業であればITが提供する機能が会社全体の競争優位をもたらす場合もあり、当然の要望だろう。
カスタマイズは、クラウドによる”汎用化”と相反することであり、カスタマイズを追及するのであればクラウドの汎用機能を使うよりも、自分で機能を一から作ったほうがいい、ということになりかねない。カスタマイズと汎用化のトレードオフをどこに見出すか、難しい課題だろう。 - Will Cloud providers survive the downturn?
果たしてクラウドコンピューティングのベンダー達は、この不景気を乗り切れるのだろうか。これは手厳しいコメントだが、小規模なベンダーが多そうな業界なので、ごもっともなご懸念だ。
どれもこれもごもっともなことばかり。今回のカンファレンスの対象がエネルギー業界であるものの、提起されたコメントは汎用性に富んでおり、業務にITを使っている顧客企業のいわば「当たり前」の要望を満たせるかどうかが、クラウド・コンピューティングの今後を考える上で重要になるようだ。
AndroidとSymbianが合併? [ソフトウェア]
InformationWeekが報じたところによると、AndroidとSymbianが今後3~6か月以内に合併する見込みだという。
引用: Android, Symbian Expected To Become One OS
By Antone Gonsalves InformationWeek 2008/7/24
Nokia (NYSE: NOK)-owned Symbian and Google (NSDQ: GOOG)-created Android are destined to be combined to provide a single open source operating system for smartphones, an analyst firm said Thursday.
The merger of the two operating systems will begin within three to six months, driven mostly by the fact that Nokia and Google are pursuing similar open source strategies with their respective technology, J. Gold Associates said in a research note.
携帯電話、それもスマートフォンと呼ばれる高機能な携帯電話のOSの世界では、Symbianが世界シェアの過半をとり、競合するLinuxやWindowsを圧倒してきたわけだが、そこへGoogleがLinuxベースのAndroidで参入を図ろうとしていた。一方、AppleのiPhone 3Gが世界中で人気を博したこともあり、三つ巴の戦いになりそうだと思われた。
そんな状況の中、今回の報道のようにSymbianとAndroidの合併が本当に実現したら面白い展開になる。ちょうどパソコンのOSがWindowsとApple OSに二分されたように、携帯の世界もOSはSymbian/Android陣営とiPhone陣営に二分されるかも知れない。これが実現したら、その先にあるのは、ハードウェアのコモディティ化とアプリケーションの標準化ではないか。
携帯電話の標準的な機能をOSが提供するようになることで、ハードウェアは独自の機能を持つ必要がなくなり、差別化の要因は処理スピードだけ、というような事態になりかねない。ハードウェアのコモディティ化だ。
また携帯電話メーカー各社が独自に作ってきたアプリケーションが、標準OSの上で動くこと、イコール、他の携帯電話メーカーのハード上でも動くこととなる。Windows以前のパソコンのソフトウェアメーカー(アプリ)がNEC向けとか富士通向けとかに分けてソフトウェアを作っていたのが、Windows以後はそうしたハードウェアの差異を気にする必要はなくなったのと一緒だ。競争のルールが変わるわけだ。
ハードウェアに依存した日本の携帯電話メーカーは早期に事業モデルの見直しを求められる可能性がありそうだ。また、アプリケーションやサービスの分野も市場構造が変わり、競争ルールが変わってくるだろう。Microsof Office Suiteのようにアプリケーションの分野でDe-factを取る動きが活発化するかも知れない。
ハードウェア、ソフトウェアそれぞれの分野で大きな構造変化をもたらしかねない。今後も携帯電話プラットフォームの動向は目が離せない。
Windowsの将来: Gartnerは悲観的 [ソフトウェア]
Microsoftは米国に引き続き日本でもWindows Vistaの値下げに踏み切るようだ(参考記事)。値下げするのは需要を喚起するため、言い換えればVistaはあまり売れていないということではないかと憶測するが、こうしたWindowsの将来性を危惧する声が著名リサーチ会社のGartnerから出された。
‘Windows’ of opportunity closing. Gartner thinks Microsoft OS is collapsing
Speaking at a Gartner-sponsored even in Las Vegas a couple days ago, two analysts from the firm gave a presentation in which they laid out why they think Microsoft’s Windows operating system is on the verge of dying. Among the key points, outlined by ComputerWorld, were:
- Windows’ rapidly-expanding codebase (that makes significant changes harder to implement)
- The slow rate of adoption for Windows Vista
- The future plans for Windows not being different enough
- The trend in OS-agnostic applications
Venture Beat誌によると、Las Vegasで開かれたイベントでGartnerのアナリストがMicrosoftのWindowsの窮状を告げた。上記エントリーのポイントを和訳すると下記のようなものになる。
- Windowsのコードが巨大化しすぎて変更が難しくなること
- Windows Vistaの普及が遅いこと
- 将来のWindowsは現行と大きく違いそうにないこと
- OSに依存しないアプリケーションが増えたこと
さもありなん、という感じだ。私自身、昨年自家用PCにVistaを導入したが、PCを買う際にXP版がなかったので仕方なくVistaを買ったに過ぎない。Vista版はOSによるメモリー消費量が増え、使い勝手がよくなったわけでもなく、セキュリティ警告を告げるWindowがやたら多くて鬱陶しい、、、という具合でどちらかといえばネガティブなことが多く、XPに戻りたいと思うこともしばしばだ。MicrosoftのOSバンドル政策は相変わらず強引だと感じている。
さらに興味深いのが、AppleのOS Xを購入する人が若手を中心に増えていることだ。米国の大学では40%の学生がMacを選択したいようだ。この数字は小さくない。私の身の回りでも、ネット系企業の方を中心にMacを使われる方をしばしば見かける。
There is another trend worth noting. The reports showing an increasing number of young people leaning towards an OS X-based Apple computer as their next purchase. One recent report states that as many as 40% of college students plan to buy a Mac as their next computer. These numbers do not bode well for Microsoft.
ということで、Windows一辺倒のあり方は今後変わって行くのかも知れない。
そうは言っても、Microsoftも手をこまねいているわけではない。Windowに依存したビジネスモデルからネット依存型のビジネスモデル("クラウド型")に転換を急いでいる。Yahoo買収への取り組みはその証左だ。
Don’t forget, Microsoft is making a move to put more data in the cloud as well (our coverage).
ユーザの立場からは選択肢が増えるのは良いことだ。