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BrightSourceがIPO Filingへ [IPO/M&A/資金調達]

太陽熱発電プラントを展開しているBrightSource Energy社が2回目のIPO Filingをする見込みとなった。


引用: BrightSource re-files for IPO
13 June 2011

Solar thermal project developer BrightSource’s initial public offering (IPO) on Nasdaq looks set to go ahead imminently, after the company filed an amended registration statement to the Securities Exchange Commission on Thursday


BrightSource Energyは、巨大な敷地に何百枚(?)もの大型の鏡を敷き詰めて太陽熱を集め、その熱でタービンを回して発電する発電事業を展開している。業績は赤字ながら、米国政府から$1.6B(約1,300億円)もの債務保証を受けており、資金力は絶大だ。ベンチャー企業と呼べるかどうか微妙だが、IPOが実現すれば、グリーンテック系ベンチャーのIPOとしては今年最大級になるのではないか。その動向に大いに注目したい。


参考: 関連エントリー


[コラム] 東証AIMはグロース向き? [コラム]

東証AIMに第1号銘柄が上場する見込みだ。栄えある第1号銘柄は、メビオファームという創薬ベンチャー。東証AIMはプロ向け市場として2009年に開設したものの、2年の長きに亘り上場案件がなかった。メビオファームという会社の内容については専門外なので評価できないが、ようやく上場企業が出てきたことを大いに歓迎したい。


とはいうものの、東証AIM開設以来なぜ2年も上場銘柄が出てこなかったか、栄えある1号銘柄のJ-Nomadが日系証券会社でなかったのはなぜか、改めて東証AIMの課題が浮き彫りになったのも事実だろう。


■J-Nomadは責任重くて割に合わない?


東証AIMに上場する企業は、「指定アドバイザー(J-Nomad)」の支援を要する。実績が少なく信用力の弱い企業は、通常は単独での上場など難しいわけだが、そうした企業であっても、指定アドバイザーの力を借りることで上場できる道を作り、新興市場を活性化と、ひいては日本のベンチャーを元気づけようと考えたのであろう。こうした指定アドバイザー制度の仕組みを導入したことは、信用力の低いベンチャーの株式公開に道を開いたという点で高く評価されるべきだ。


しかし、「投資の自己責任原則」を考えると話が込み入ってくる。


指定アドバイザーの支援を受けて上場した企業が、その後上場廃止になったり破綻した場合、その企業に投資した投資家は損害を被ることになる可能性が高いわけだが、そうした損害は果たして100%その投資家の自己責任なのだろうか。それとも「指定アドバイザー」も何らかの責めを負うべきなのだろうか。


株式投資は「自己責任」が原則だ。東証AIMであろうと他の市場であろうと、株式投資した企業が破綻したことでその株主=投資家に損害が発生するとしたら、それは投資家の責任であって他のだれの責任でもない。投資家が適切な投資判断を行い得るよう、情報開示の公正さを担保することが極めて重要なのだが、それが確保されていれば、投資するかどうかを決めるのは投資家自身であり、その結果についても責任がある。投資によって利益が発生すればそれは投資家が享受すべきものだし、損失が出ても同じように投資家はそれを甘受しなければならない。株式会社とはそういうシステムだ。


東証AIMに上場した企業であっても、仮にそれが破綻して投資家に損害が発生するとしたらそれは投資家自身の責任だ。情報開示が正しく行われている限り、指定アドバイザーが何らかの責めを負うべきものではなかろう。


とはいうものの、破綻企業にかかわった指定アドバイザーに対して、日本の投資家はどう反応するであろうか。投資の自己責任論が脇に追いやられ、「破綻するような企業を支援する指定アドバイザーが悪い」というような議論が出てきたりしないか。こうした「紹介者責任」ともいうべき習慣があることで、誰も紹介者になろうとせず、上場のチャンスを得られずにいるベンチャーがあるとしたら不幸なことだ。


東証AIMは日本の証券取引所であるわけで、当然のことながら日本の証券会社の奮起が期待されたであろうが、上記のような紹介者責任を問われるとしたら証券会社も動きづらいことだろう。1号案件の指定アドバイザーが日系証券会社ではなく海外勢であったのは、そんな背景と無縁でないのではなかろうか。


■機関投資家の参加は期待薄?


東証AIMへの上場は、他の市場に比べて成熟度が低い段階でも公開可能であることから、東証AIMでは「プロ投資家」のみの参加を前提にしている。プロ投資家であれば、上記のような紹介者責任に絡む話は無縁だということなのだろう。


そのプロ投資家とは誰なのかと言うと、東証の表現を借りれば、下記の者のようだ。


引用: TOKYO AIMに投資できるのは?

TOKYO AIMは、金融商品取引法の改正により導入されたプロ向け市場制度に基づく市場です。

制度上、TOKYO AIMにおいて直接買付けが可能な投資家は、特定投資家及び非居住者に限られます。一般投資家は取引所に直接買注文を入れることはできず、投資信託等を通じて、市場に参加することとなります。(何らかの理由でTOKYO AIMの上場株式を保有している一般投資家がTOKYO AIMを通じて売却することは可能です。)

特定投資家の定義は、金融商品取引法上、以下のとおりです。

  • 適格機関投資家(金融機関など)
  • 上場会社
  • 資本金5億円以上の株式会社
  • 政府・日本銀行
  • 地方公共団体

「みなし」特定投資家(証券会社への申出、確認が必要)

  • 上記以外の株式会社
  • 3億円以上の金融資産及び純資産を持ち、金融商品について1年以上の取引経験を有する個人

ざっくり言えば、プロ投資家とは、機関投資家や大会社、あるいは証券会社に申出・確認した人のようだ。ちなみに非居住者であれば無条件に取引に参加できるところが面白い。非居住者で東証AIMの株を買うような人はプロしかいまい、ということか、、、


では、本当に東証AIMにプロ投資家は入ってくるであろうか。


日本の既存の新興市場(東証マザーズ、大証ヘラクレス等)の主要プレーヤーは個人投資家のようで、機関投資家の影は薄い。既存新興市場よりもさらに小規模な会社でも公開できる東証AIMにプロ投資家の資金を呼び込むことは可能だろうか?


■グロースファンドの出番では?


東証AIMの位置づけや狙いが何かによるが、それが「既に会計上の業績を実現しており今後も成長を見込める企業」ではなく、「まだ会計上の業績を実現していないが今後の成長を見込める企業」に対して資金調達の道を開いたものだと考えるとわかりやすい。東証AIMは東証1部、2部やマザーズと言った他の市場よりも早い段階での株式公開が可能な市場だということになる。(この考え方が間違っているとしたら、どなたが適切な考え方をご教示ください)


そうした早い段階の企業に投資する投資家は、通常の上場企業への投資とは別の知見が必要になるはずだ。生損保や銀行・証券といったところで上場株に投資している方々のノウハウとは少々違ってくるのではないか。過去の会計情報はあまり役に立たないだろうし、ましてやPERやPBRを見て株価が高いの安いのという世界ではない。


これって、専門性を持ったファンド、たぶんグロースファンドのようなものの出番ではないか?


東証AIMに上場する企業に投資し、何年後かに本則市場に上場する際に売却するような収益モデルが考えられる。日本のVCには資金を持て余しているファンドもありそうだ。あるいは新規分野への参入を考えたいファンドもあろう。そうした諸氏にとって、東証AIM上場企業に投資するファンドというのは一考の価値があるのではないか。東証AIMは「プレIPO」市場だと割り切り、東証AIMに求められるノウハウに長けたプレーヤーの参加を促すという考え方があってもいい。


グロースファンドによる東証AIM活性化、そんな考えはいかがであろうか。


GrouponのIPOはバブル再来のきざし? [IPO/M&A/資金調達]

いよいよGrouponがIPOするようだ。いったいどのくらいの時価総額がつくか、あちこちで議論が賑やかだ。NY Timesあたりでは、US$30B(300億ドル、約2.5兆円!)の時価総額がつくかも、なんていう記事が書かれている。


引用: Groupon Plans I.P.O. With $30 Billion Valuation
June 2, 2011

As Groupon would say, the deal is on.
The social buying site on Thursday filed to go public, a hotly anticipated debut that could raise $3 billion, according to two people close to the company who were not authorized to speak publicly. At that level, the company would be worth roughly $30 billion, surpassing the value of Google at its initial public offering.


2004年にGoogleが公開した時の時価総額は$27Bだったが、Grouponに$30Bの価格がつくとしたらGoogleをも凌駕する驚くべき数字だ。ちなみにGoogleのIPOも当時は随分と話題になったもので、Googleの社員からミリオネアが続出し、皆さんシリコンバレーで新たに住宅を買いあさったものだから、シリコンバレーの不動産価格が一気に高騰したなんて噂も流れたものだ。Grouponの社員は8,000人いるというが、さぞかし世界各地の不動産市況に影響を与えることだろう。


 しかしながら、果たして$30Bのバリュエーションは妥当だろうか?


TechCrunchに分析が載っているので引用させていただくと、


引用:Groupon、IPO申請書に基づく年間収益予測は驚異の$2.6B

ついにGrouponが今日IPOを申請し、同社の財務状況があらわになった(リンク先に財務情報全文がある)。Grouponは驚異的ペースで成長を続けている。昨年同社の収益は2万2000%増の$713M(7億1300万ドル)だった。そして、2011年第1四半期だけで、昨年1年間の収益にほぼ匹適する$644M(6億4400万ドル)を上げている。これは前年同期比1万3575%増である。


創業2年目の2010年は売上$713M(約60億円弱)という驚異的な数字を記録し、2011年第1四半期だけで$644Mというから2010年1年分に匹敵する売り上げを記録している。成長スピードは驚異的だ。


しかし、大赤字でもある。2010年は$456Mの損失、2011年第1四半期も$147Mの損失と、大赤字の連続だ。


  2008 2009 2010 2011Q1
売上高 94 30,471 713,365 644,728
売上総利益 5 10,929 279,954 270,000
純利益(損失) -1,542 -1,341 -413,386 -113,891

(単位:千ドル)


2010年はざっくり言って$700M弱の販管費を使っているようで、同年の売上高に匹敵するレベルだ。2010年の平均従業員数が何人であるか不明だが、仮に7,000人とすれば、単純計算で従業員一人当たり100k(約8百万円)を売り上げ、同じく100k(約8百万円)の販管費を使ったことになる。


これって、果たして儲かるビジネスなのだろうか?


急成長によって市場を一気に制覇し、その後で高収益体質に移行する等の手はあると思うが、その段階に移行するまで順調に資金調達出来るかどうか、更に急成長に伴う数々の課題(「スカスカおせち」は記憶に新しい)を如何にこなしていくか、マネジメントの巧拙が問われるところだ。


いろいろと課題はあるものの、話題性たっぷりだ。今後の動向に注目したい。 


悲喜交々の太陽光: 巨額資金を集めたBrightSource、退出するSoliant [VC業界動向]

福島原発の事故以来、世界のクリーンテック業界が騒がしい。今後のエネルギー政策の方向性や次世代の本命技術を巡って百家争鳴状態だ。


原子力を代替する手段として注目を集める太陽光発電だが、その中でも事業規模の大きさが特徴の「集光型太陽光発電」における著名企業2社で新たな動きがあった。


BrightSource Energy社が$201Mの資金調達をした。シリーズEラウンドだそうだ。


引用: BrightSource Raises Another $201M for Solar Thermal
Greentech Media, March 31, 2011 

BrightSource Energy of Oakland, Calif. has raised $201 million in a Round E, bringing its total funding to more than $530 million in private equity. That funding is in addition to a federal loan guarantee of $1.3 billion. The investors include Alstom, a French power plant player, as well as the usual suspects -- Vantage Point Venture Partners, Alstom, CalSTRS, DFJ, DBL Investors, Chevron Technology Ventures, and BP Technology Ventures, together with new investors. 


BrightSourceは今回の調達額を含め、累計で$530M以上を集めたようで、更に連邦政府から受けている13億ドルの債務保証を合わせると、総額で18億ドル(約1,500億円)もの資金を集めたことになる。アメリカのベンチャー投資の規模は総じて日本よりも大きいが、ここまでの規模になる例はそれ程多くない。ベンチャー投資というよりは、グロース投資、あるいはインフラ投資というべきだろう。投資家の顔触れはVCではVantagePointやDFJ、金融系ではMorgan Stanley、事業系では石油会社のBPやChevronが入っている。Googleも出資しているようだ。ピカピカの顔触れだ。


これだけの資金を投じたこともあり、やることもデカイ。集光型の太陽光発電(太陽熱発電という方が正しいでしょうね)のプラントを米国のあちこちに持っているようで、1ギガワットを超えるクラスの発電設備に複数関与しているようだ。ちなみに、福島原発の発電機6機を合わせた出力は4.7ギガワットになるらしいが、福島第1原発全体の規模と比べると、1ギガワットという出力の大きさがなんとなくイメージできる。


発電出力は大きいが、それなりの資金をつぎ込んでいる。果たして発電コストがどうなるのか気になるところだが、政府の支援も取り付けて脇目も振らずに突き進むあたり、いかにもアメリカ的だ。この会社がいくらでIPOするか、非常に注目される。


アメリカにはこんなBrightSourceのような注目のベンチャー企業もあるわけだが、その一方で静かに退場していく企業もある。


引用: Emcore Acquiring CPV Firm Soliant for $450K

Greentech Media, March 28, 2011

Emcore (NASDAQ:EMKR) is acquiring Soliant, the rooftop concentrated solar company, according to a reliable source.  We're awaiting a response from the involved parties but have gotten a verification from other sources close to the deal.

And the sale price is, drumroll please, $450,000.

Soliant had raised more than $29 million in venture funding from Rockport Capital, Nth Power, Rincon Venture Partners, Convexa, Trinity Ventures, and GE Energy Financial Services.


Soliantという集光型太陽光発電(こちらは太陽電池タイプ)の会社が45万ドルで売却されたという記事が出された。Soliantは$29Mの資金を集めながら、ほとんど二束三文で売却されてしまったことになる。投資家の顔触れも決して悪くなかったし、有名な企業だったが残念な結果だ。


原発をめるぐ今後の方向性がぐらついている中で、日本でも海外でもクリーンエネルギーに対する期待が高まる方向にあることは間違いなかろうが、一筋縄でいくものでもない。成功するまでのコストは大きく、失敗するリスクも少なくない。肝を据えて取り組む必要がある分野だ。


今後のエネルギー政策の行方 [コラム]

東日本大震災は非常に衝撃的だった。テレビで放送される映像が信じれなかった。こんなことが起こっていいのだろうか。人間の英知というのは自然の猛威の前では全く非力なものだ。被災者の方には心よりお見舞いを申し上げたい。


福島原発の状況も気になる。関係者の命がけの行動により、事態は着実に改善の方向に向かっているように見えるが、報道を見る限り、引き続き乗り越えなければならない障害はまだまだありそうだ。危険な環境下で作業をされる方々をどのように応援したらいいかわからないが、一市民としてただひたすら彼らの成功を信じている。


ところで、今回の原発の事故により、世界中で原発の是非に関する議論が沸き起こっているのは皆様ご承知の通りだ。福島の現状を見れば、人類の英知など所詮自然の前では無力なのだから、「原発を止めろ」というのもごもっともな意見だ。しかし、原子力が日本や世界のエネルギー源としてどの程度貢献していたかを踏まえないと、そう単純に割り切れるものでもない。


資源エネルギー庁のエネルギー白書によると、日本の1次エネルギーに占める原子力の割合は10%程のようだ。新エネルギー・地熱も3%ぐらいあるという。


引用: エネルギー白書2010 (資源エネルギー庁)

(前略 )一次エネルギー国内供給に占める石油の割合は、2008年度には、41.9%と第一次オイルショック時(75.5%)から大幅に改善され、その代替として、石炭(22.8%)、天然ガス(18.6%)、原子力(10.4%)の割合が増加する等、エネルギー源の多様化が図られています。

211-3-1


上記は日本の「エネルギー」の供給源全体の話だが、電力に限ってみると原子力の貢献度は大きくて、3割くらいにも上る。


引用: 日本の発電電力の構成について (資源エネルギー庁)

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日本の全発電量の3割に上る原子力を廃止しようと思ったら、これに代わる発電手段を見つけるか、あるいは電力量を3割減らしても経済水準を維持できる社会構造・産業構造を作るかしかない


手っ取り早いのは火力発電の割合を増やすことだと思われるが、CO2削減の議論があるなかで石油や石炭を燃やす火力発電を増やすことは、地球温暖化の観点からは大いに問題だ。


ベンチャーの立場からすれば、太陽電池、風力発電など、既存のエネルギーを代替する新たなエネルギーのニーズが高まることは間違いなかろう。しかし、そうした新エネルギーの発電コストはまだまだ高く、現在の技術水準の延長では全発電力の3割を代替するなどと言うのはありえない。何か画期的なブレークスルーが必要だ。資金、人材など多くの資源を投入する必要があろう。


原子力発電をどうするか、容易には答えを見いだせそうにない。しかし東日本大震災が起きたことで、非常に大きな転換が起こるかも知れない。この未曽有の危機を乗り越え、エネルギーの新たな枠組みをいち早く実現し、日本の国力アップにつなげたいものだ。


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