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Twitterのバリュエーション [VC業界動向]

Logo_2Twitterが今年9月にUS$100Mの資金を調達したようで、発行済株式の時価総額はUS$1B(約900億円)を記録したそうだ。このご時世にあって強気の価格だ。ネット上にTwitterのバリュエーションの推移が紹介されているので参照してみよう。

引用:Private Company Valuations: Twitter, Inc.

... Twitter, Inc., located in San Francisco, is a short messaging service that allows users to post everything from what they are doing to the latest breaking news. (You might even find this PEDC Buzz on Twitter.) As mentioned, the company recently announced a closing of a Series E round of financing at a reported amount of $100 MM. Based on information posted on the company website, the company publicly thanked investors Insight Venture Partners, T. Rowe Price, Institutional Venture Partners, Spark Capital, Benchmark Capital, and Morgan Stanley. The Deal Terms of this Series E round and the previous rounds were:

Filing Date 07/11/2007 07/17/2007 07/10/2008 02/12/2009 09/22/2009
Liquidation Preference for the Current Round Not Applicable Senior Pari Passu Senior Senior
Round of Financing Series A Series B Series C Series D Series E or greater
Round Direction Not Applicable Up Round Up Round Up Round Up Round
Multiple of the Liquidation Preference: 1x; 2x; 3x; > 3x. 0 - 1x 0 - 1x 0 - 1x 0 - 1x 0 - 1x
Type of Preferred Stock Conventional Convertible Conventional Convertible Conventional Convertible Conventional Convertible Conventional Convertible
Anti-Dilution Protection   Weighted Average Weighted Average Weighted Average Weighted Average
Redemption at Investor's Option No No Yes No No
Pay-to-Play Provisions No No Yes No No
Cumulative Dividends No No No No No
Price Per Share* $0.01 $0.67 $2.06 $4.31 $15.98
Total Amount Raised in Current Round $97,500 $5.5 MM $17.37 MM $35.7 MM $100 MM


ここに挙げられた数値は会社側による公式発表ではなく、どうやら推定のようだ。よく調べられており、いろいろと興味深いことがわかる。



  • Twitterは創業期(2007年7月~2008年7月)には約$5.6Mしか資金調達していない。米国ベンチャーにしては比較的少額の資金でスタートしている。やはりネット系ベンチャーは少額資金でスタートするのが常道だということか。
  • Cラウンド以降、わずか1年余りの間に$150Mを越える資金を一気に調達してきた。Bラウンドまでの資金調達スピードと比べると爆発的な伸びだ。如何に事業が急拡大してきたかがわかる。
  • CラウンドのLiquidation Preference(残余財産優先分配権)がPari Passu、つまりC種優先株は発行済みのB種優先株と同順位となっており、しかもPay-to-Playまでついている。増資ラウンドにおいては通常優先順位が高まる(Senior)ことが多いことを考えると、Cラウンドに参加する株主よりも既存株主の交渉力が強かったことを意味する(あるいはBとCの株主が同一で順位を上げる必要がない?)。
  • Aラウンドの株価0.01ドルと比較すると、Eラウンドの株価は1.6万倍となった。TwitterにAラウンドで1万ドル出資した人は、持ち株の価値が既に1.6憶ドル(約140億円)になっているわけだ。


日本もアメリカもまだまだベンチャーの業界は楽ではないが、このTwitterの数字の歴史を振り返ると、引き続き伝統的な急成長ベンチャーが健在であること、それを前提としたVCモデルが有効であることを示していると言えそうだ。



ちなみに、今回のデータを引用させてもらったPEDCだが、会費を払えば米国未公開企業のバリュエーションを閲覧できるようだ。


書評: 松下幸之助氏 「社長になる人に知っておいてほしいこと」 [経営]

松下幸之助氏の金言を集めた本です。



会社経営においてしばしば発生する課題にどう対処したらいいか、経営に携わる人なら誰もが直面する課題に対して、「経営の神様」である幸之助氏の助言を仰ぐことができます。



世の中に経営指南の本は数あれど、これほどまでに説得力、わかりやすさにおいて右に出る本は少ないのでは。



昭和30年代、40年代の幸之助氏のコメントを多く集めた本ながら、驚くのはそのコメントが現在の日本においてもそのままあてはまり、まったく新鮮さを失わないこと。日本を取り巻く情勢はガラッと変わっているはずなのに、一つ一つの言葉は決して色あせない。経営に求められる根本的な思想というものはほとんど変わらないということでしょうか。



ドラッガーもいいですが、よりわかりやすくズバッとくる金言を得たいなら、是非とも読んでみたい本です。経営に携わる人や経営者の発想を会得したい人に、座右の書となることでしょう。



書評のつもりが、とてもおこがましくて評価なんてできません。ただただ「お勧め本」です。




近未来のコンピューター [その他テクノロジー]

VC業界も長くつらい時期が続いているが、そろそろ前向きな話も増えてきたよう今日この頃だ。そんな中、近未来のITの話が目にとまったので紹介しよう。コンピューターのユーザインタフェースの話だ。



コンピューターはますます高機能になっているが、その高度な処理能力によってユーザインタフェースはユーザフレンドリーな方向に向かっている。これからのコンピューターは、もう面倒な操作は不要だ。
QWERTYキーボードの配列を知らなくたって、マニュアルなんか読まなくたって、ダブルクリックをできなくたって(今となれば懐かしい話だがWindows95が出たばかりの頃はこれで苦労した方が少なくなかった)、コンピューターを操作できるようになる。



代表的なところではAppleのタッチスクリーンがそうだし、Google Voiceを筆頭に巷で動き出した音声認識系のサービスもしかり、任天堂Wiiのコントローラーもしかり。近いうちに登場しそうなMicrosoft XboxのProject NATALも身振り手振りでゲームを操作できるものとして注目だ。このように「コンピューターが人間に合わせる」時代が来つつある。



この分野の研究開発はさらに先に進んでいる。Microsoft Researchでの取り組みを紹介した下記の記事を見てみよう。

引用: Speech, touchscreen — been there, done that. What’s the user interface of tomorrow?
Venture Beat 2009/9/2

... A muscle-computer interface would allow users to interact with their computers even if their hands are occupied with other objects (e.g., carrying a briefcase, holding a phone or a cup of coffee, etc).

近未来のインタフェースとして最初に挙げられている例はマッスル・コンピュータ。「筋肉センサー」とでも訳そうか。人間の筋肉の動きを読み取ってコンピューターを操作するための入力装置のようで、コンピューターの操作を手足の動作で行えるようになるということのようだ。そういえば、日本のロボットベンチャーで実際に商品にしているところがあったような気もするが。。。

Tongue-based interaction could enable users who are paralyzed but still have control of their eyes, jaw and tongue to use tongue gestures to control a computer. The idea is to use infrared optical sensors embedded in a retainer inside the user’s mouth to sense tongue movement.

次は舌を使うインタフェースだ。障害のある方などに有効かも知れない。

The bionic contact lens project allows contact lenses to continuously perform blood tests on an individual by sampling the fluid on the surface of the cornea and without having to collect a blood sample. The lens could eventually analyze the fluid and send that analysis wirelessly as part of a healthcare monitoring program.

興味深いのは「バイオ・コンタクトレンズ」。このコンタクトレンズは、眼球に接しながら血液検査と同じような分析を常時行い、その情報をワイヤレスで発信してくれるらしい。いわばリアルタイム血液検査装置といったところか。糖尿病患者の多いアメリカならではの発想だ。



なんだか人間とコンピュータが「合体」しそうな勢いだ。少し前に「ウェアラブル・コンピューター」という言葉があったが、考え方はそれに近い。



ここに挙げられたものは、世界中で取り組まれているプロジェクトのほんの一部に過ぎない。人間がコンピューターに振り回されるのでなく、コンピューターが人間にやさしくなる時代がやってきている。まだまだITでやれることは多い。


米未公開株式の流通市場 [VC業界動向]

以前紹介した米未公開株の取引サイトを運営するSharesPostだが、未公開株取引の実績もぼちぼち出てきたようだ。米国の未公開企業で有名なところ、たとえばFacebookとかLinkedInとか、そうしたところの売買の現状を見ることができる。



興味のある人は、SharesPostのサイトで誰でも簡単に登録できるのでやってみよう。ログインすれば実際にどのような会社の株式が、いくらぐらいで売買されているのかわかる。まだ登録されてない人のために画面のイメージをお伝えすると、下記のようなものだ。



Facebook_2



写真をクリックしてみると雰囲気がわかると思う。売り手と買い手それぞれの希望価格がリストになっている。この例では、Facebookの株が14.42ドルで取引さることになりそうだ。発行済株数が425百万株なので、時価総額に換算するとおよそ614億ドル、約6,000憶円となる。ちなみに、2007年10月にMicrosoftがFacebookに出資した時の時価総額は150億ドルだったから、約2年の間にFacebookの価値は4倍になったことになる。



同じように有名企業の取引事例を時価とみなすと、最近の時価総額はこのようになる。



  • LinkedIn: 134億ドル
  • Tesla Motors: 109億ドル
  • Twitter: 買気配 2.8億ドル
  • Linden Lab: 売気配 2.6億ドル
  • SolarCity: 買気配 2.5憶ドル
  • SugarCRM: 売気配 1.8億ドル


どのような会社が人気で、逆にどのような会社が不人気か、今の市場の状況が垣間見れて興味深い。


ほっと一息、米VC投資が回復傾向 [VC業界動向]

昨年来の金融危機によりVC業界も調整色が強かったが、ようやくボトムを脱した感がある。



DowJonesのVentureSourceの発表によると、2009年第2四半期の米VC投資額は第1四半期に比べて3割増と大幅に回復してきた。引き続き2008年までの水準には及ばないものの、最悪期を脱した感がある。

Q2 Venture Investing looks like it's 2005 (and that's a good thing)
by VentureBeat 2009/7/17

... In Q2 (from April to June), venture capitalists invested a total of $5.27 billion in 595 deals. That’s pretty meager compared to the $8.33 billion invested in 726 deals during the same period last year but, as you may be aware, that was a very different time, economically speaking. It’s a big jump from the $4 billion invested last quarter, so we might even begin to start talking about a reovery.

要約すれば、2009Q2の米VC投資は527億ドル・595件と、前年同期の833億ドル・726件と比べれば低調に見えるが、2009Q1の400億ドルよりは大幅アップだ、そんなに悪くないよ、というわけだ。同誌に掲載された下のチャートを見ればその動きがよくわかる。



2q09overall



さらに、出口も多少は回復してきたようだ。2009Q1のIPOはゼロだったが、Q2は5件。まだまだ水準は低いものの、とりあえずIPOが復活したことを歓迎したい。



Exit market warms with five IPOs in Q2



Picture2



ちなみに公開したのは下記の5社で、うち4社がIT系だ。ITもちょっと復活といったところか。



SolarWinds, OpenTable, MediData Solutions, Bridgepoint Education. DigitalGlobe


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